【7月19日 AFP】ドイツがアフガニスタン人犯罪者81人を、イスラム主義組織タリバン暫定政権が統治するアフガンに強制送還したのを受け、国連はたとえ犯罪者であろうとアフガンに送還するべきではないと非難した。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、紛争と危機に見舞われたアフガンに、特に地域内、そしてさらに遠方から強制送還されるアフガン人の数が急増していることが「多層的な人権危機」を引き起こしていると警告した。

OHCHRのラビナ・シャムダサニ報道官はスイス・ジュネーブで記者会見し、「ボルカー・ターク国連人権高等弁務官は、すべてのアフガン難民と庇護希望者、特に帰還後に迫害、恣意(しい)的拘禁、拷問を受ける恐れのある人々の強制送還を即時停止するよう求める」と述べた。

シャムダサニ氏は、たとえ有罪判決を受けた犯罪者であっても、深刻な人権侵害に直面するリスクのある国に送還することは、「国際法の中核原則であるノン・ルフールマン原則(迫害などを受ける恐れのある国に、難民や庇護希望者を強制送還することを禁止する原則)に違反する」と強調した。

これに先立ちドイツ政府は、国内で犯罪を犯して有罪判決を受けたアフガン人の男81人を、イスラム主義組織タリバン暫定政権が統治するアフガンに強制送還したと発表した。ドイツからタリバン政権下のアフガンへの強制送還は2度目。

ドイツは多くの国と同様、2021年にタリバンが政権に復帰した後、強制送還を停止し、在アフガン大使館を閉鎖。タリバン暫定政権とは第三国を通じて間接的にしか接触していない。

だが、中道左派のオラフ・ショルツ前政権は2024年8月30日、有罪判決を受けたアフガン人28人を強制送還。タリバンの政権復帰後初の措置となった。

アフガンは今年、イランとパキスタンから190万人以上が帰国し、既に混乱に陥っている。

シャムダサニ氏によると、イランは過去1か月だけでアフガン人約50万人を強制送還した。

国連は先週、年末までに最大300万人がアフガンに帰還する可能性があると警告した。

シャムダサニ氏は「強制であれ、自発的であれ、アフガンに帰還する人々は、深刻な人道・人権危機に直面している国を目の当たりにする」と主張。

「彼らはまた、構造的・制度的な差別、ジェンダーに基づく迫害、民族問題、アフガン社会への完全な再統合への障害、そして低迷する経済による仕事と生計手段の不足にも直面する」と付け加えた。(c)AFP