ホロコースト記念館、「歴史歪曲」する銘板を非難 ユダヤ人虐殺の責任をナチスに転嫁
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【7月11日 AFP】イスラエルのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)記念館「ヤド・バシェム」は10日、第2次世界大戦中のポーランド・イェドバブネにおけるポーランド人によるユダヤ人虐殺の犠牲者を追悼する碑近くに設置された新たな銘板を「歴史的真実の冒涜」だと非難した。
銘板は公式調査結果に疑問を呈し、「この犯罪は地元のポーランド人ではなく、ドイツの宣撫班(せんぶはん)によって行われた」と主張する内容。
ポーランドの日刊紙ガゼータ・ビボルチャによると、新たな銘板は英語とポーランド語の掲示が付された7つの岩で構成されており、碑に隣接する私有地に設置された。
ポーランド人ジャーナリストのボイチェフ・スムリンスキ氏がX(旧ツイッター)で、自身が銘板設置を主導し、資金はクラウドファンディングで集めたと明らかにした。
ヤド・バシェムは、「ポーランドのイェドバブネの碑において、ユダヤ人虐殺の物語を明らかに歪曲(わいきょく)しようとする意図で最近新たな銘板が設置されたことで、歴史的真実と記憶が冒涜されたことに大きな衝撃を受け、深く懸念している」と述べた。
さらに、「ポーランドの関係当局に対し、この侮辱的な設置物を撤去し、イェドバブネの碑の歴史的意味が保存・尊重されることを確実にするよう求める」と付け加えた。
10日は、ポーランド北東部のイェドバブネ村でポーランド人農民が隣人であるユダヤ人数百人を納屋に閉じ込め、生きたまま焼き殺した虐殺から84年の節目だった。犠牲者には女性と子どもも含まれていた。
ポーランド出身のユダヤ系米国人歴史家ヤン・トマシュ・グロス氏は著書『隣人たち』の中で、イェドバブネ事件における地元住民の役割に光を当てた。この本はポーランド全土に衝撃を与え、2001年には大統領が謝罪する事態となった。
ポーランドの調査委員会は2003年、1941年のイェドバブネ事件は、長年主張されてきたようにナチス・ドイツ占領軍によるものではなく、占領軍にそそのかされたイェドバブネのポーランド人によって行われたとの結論を下した。
戦時中、特に農村部において、数千人のユダヤ人が隣人であるポーランド人の手で命を落とした。
一方で、家族全員の命を危険にさらしてユダヤ人を救ったポーランド人も数千人いる。
ヤド・バシェムは、第2次世界大戦中にユダヤ人の救助に貢献したとして、国籍別では最多となるポーランド人7000人以上を「諸国民の中の正義の人」と認定している。(c)AFP