【7月11日 AFP】ハンガリーは10日、ウクライナでハンガリー系男性が軍の徴兵担当者に暴行され、数週間後に死亡したとの疑惑をめぐり、ウクライナ大使を呼び出した。

ウクライナ当局は、男性が強制的に動員されたという主張を「断固として」否定し、暴行疑惑も否定した。

この出来事は、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始以来、不信感で彩られてきたウクライナとハンガリーの関係をさらに緊張させた。

ウクライナは、ハンガリーがロシア側に付き、ウクライナの欧州連合(EU)加盟を妨害していると非難している。

ハンガリーのマジャル・レベンテ外務副大臣は、「ウクライナのザカルパッチャ州で(民族的に)ハンガリー人(マジャール人)の男性が強制徴兵中の担当者に暴行され、後にその時の傷が原因で死亡したことを受け、直ちに駐ハンガリー・ウクライナ大使を召喚する」とフェイスブックに投稿した。

「戦争に行きたがらない、無意味な殺戮(さつりく)に参加したがらないというだけで、人を、特にハンガリー人を撲殺するなど、言語道断で容認できない」と付け加えた。

ハンガリー政府寄りのニュースサイト「Mandiner」は、ヨーゼフ・セベステニー氏(45)が6日に死亡したと報じた。同サイトは同氏の姉妹のフェイスブック投稿を引用しているが、投稿は現在、非公開となっている。

報道によると、セベステニー氏は死亡する約3週間前、ハンガリー系住民が多く暮らす西部ザカルパッチャ州のベレホベ市で、軍の徴兵担当者に呼び止められた。

セベステニー氏は近くの森に連れて行かれ鉄棒による暴行を受け、後に軍の訓練施設から病院に搬送されたという。

AFPは現時点でこの件の詳細を確認できていない。

ウクライナ軍は、セベステニー氏はウクライナ国民であり、兵役に適していると判断された後、「合法的に動員」されたと述べた。

同軍は「法医学的検査の結果、2025年7月6日のセベステニー氏の死因は肺塞栓症であり、暴力行為を示唆するような身体的損傷の兆候は一切見られなかったことが確認された」としている。

ハンガリーのオルバン・ビクトル首相は10日、セベステニー氏の遺族に哀悼の意を表し、同氏を「強制徴兵」の犠牲者と呼んだ。

オルバン氏は、ウクライナへの軍事支援を拒否し、繰り返し和平交渉を求めている。

ウクライナでは昨年、徴兵規則を厳格化する法律が可決されており、徴兵はデリケートな問題となっている。特に戦いの影響が少ない西部では、徴兵担当者による虐待や暴力行為が行われていると非難されている。(c)AFP