ホテルが屋台を出店、庶民のにぎわいにも商業的価値
このニュースをシェア
【7月24日 東方新報】最近、河南省鄭州市の五つ星ホテルが屋台を開いて、1日で約3万元(約61万円)を売り上げたというニュースが話題になった。料理人たちはきちんとした制服を着て、午後5時に屋台を開きザリガニを販売。1時間ほどでほぼ完売したという。ホテルのマネージャーは「屋台を出すことで格が下がるとは思わない」と率直に語っている。
かつて五つ星ホテルは「敷居が高くて値段も高い」と見られていたが、競争の激化などを背景に、今や多くの高級ホテルが経営のかじ取りに悩んでいる。そんな中で屋台出店という一見「型破り」とも思える取り組みは、サービス業が自ら進んで変化を受け入れようとしている姿勢のあらわれであり、ブランド価値とは何かを改めて考えさせられる。
実際に、こうした「越境的な挑戦」は他のホテルでも見られる。たとえば、浙江省(Zhenjiang)紹興市(Shaoxing)ではホテルが臭豆腐を路上で販売し、天津市(Tianjin)のホテルでは58元(約1180円)のハンバーガーを移動販売している。こうした動きは、消費者がコストパフォーマンスを重視する時代において、高級ホテルが柔軟に業態を見直すことが賢明であることを示している。
「普段は入れないホテルで、庶民的な価格でローストダックや煮込み料理が買えるなんて」「人生で初めて五つ星ホテルで肉まんを買った」といった市民の声がSNSなどにあふれ、動画も数多く投稿されている。ブランドと消費者の間にあった心理的な距離が縮まり、誠実さや親しみやすさといった新たな価値が生まれている。
今回の屋台出店は個別の事例ではあるが、サービスのあり方を見直すうえで多くのヒントがある。ひとつは、リーズナブルな価格の商品をきっかけに来店を促し、屋台からホテルのレストランや宿泊施設へと顧客をつなげる流れを作ること。もうひとつは、「本格料理の簡易版」や「飲食の小売化」といった新しい試み。たとえば、ショート動画で豚肉の煮込みをライブ販売したり、移動式フードトラックを使って地域に出向いたりと、オンラインとオフラインを融合させた新たなサービス形態が広がっている。こうした積極的な変化は、市場の動きに柔軟に対応しようとする姿勢であり、同時に「人びとのリアルなニーズにどう応えるか」という商業の原点を見つめ直すことにもつながっている。
厳しい競争環境の中で、五つ星ホテルの屋台出店はある種の「目覚まし」のような存在だ。ブランド価値とは「高級感」だけではなく、人々の暮らしに誠実かつ現実的に寄り添うことでもある。プライドを捨てて庶民の街角に出ていくことで、ホテルとしての可能性を広げるとともに、「本物のサービスとは何か」を社会に問いかけている。つまり、商業の本当の価値とは、人と人とをつなぎ、互いにメリットを生み出すことにある。
実利的かつ柔軟な姿勢こそが、変化の激しい市場で生き残るための道しるべになる。今回の「五つ星ホテルの屋台チャレンジ」は、サービス業がどうすればより健全で持続可能な未来を築けるのか、多くの示唆を与えてくれる。(c)東方新報/AFPBB News