【三里河中国経済観察】部品代の長期未払いに歯止め、自動車業界が是正へ
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【7月11日 CNS】新車が生産ラインを離れ、購入者が喜びのうちに契約書にサインをする。その一方で、何百キロも離れたとある二次部品メーカーの工場では、経営者が帳簿を見ながら頭を抱えている。なぜなら、その車に使われているある重要部品の代金が、完成車メーカーから半年以上も支払われていないからだ。
ここ最近、自動車業界では価格競争が激しさを増し、自動車メーカーの利益率が圧迫されている。この影響はサプライチェーンの各段階にも波及し、部品メーカーへの支払い遅延や資金繰りの悪化が顕在化している。
こうした背景のもと、SNS上では「車業界の恒大問題」や「常圧燃料タンク」などの論争が注目を集め、自動車産業における過剰な競争、いわゆる「内巻き」状態が社会的関心を呼んでいる。
しかし、業界ではすでに「反内巻き」の動きが始まっている。
第一汽車集団(FAW Group)、東風汽車(Dongfeng Motor)、広州汽車集団(Guangzhou Automobile Group)、賽力斯汽車(セレス、Seres)など17の主要自動車メーカーがこのたび共同声明を発表し、「部品メーカーへの支払いは60日以内に行う」との誓約を打ち出した。この集団的な取り組みは、自動車産業が本格的に「内巻き」是正へと踏み出したことを示す重要な一歩である。
5月31日には、中国自動車工業協会が「公正な競争秩序を維持し、健全な業界発展を促進するための提言」を公表。これを受けて、工業情報化部も支持を表明し、過度な競争の是正に注力する方針を明らかにしている。
今回の自動車メーカーによる対応は、中国自動車工業協会の呼びかけに応えたものでもあり、また2025年6月1日に施行された改正「中小企業支払遅延防止条例」の具体的な実行でもある。この条例では、大企業が中小企業から物品・工事・サービスを調達する場合、納品日から60日以内に支払うことが義務づけられている。
こうした共通認識から具体的な行動への移行は、「完成車-部品メーカー」間の共存共栄のエコシステムを築き、持続可能な産業発展を目指すうえで大きな意義を持つ。
中国の自動車産業はいま、質の高い成長を実現するうえで極めて重要な転換点にある。
2024年には生産・販売台数ともに過去最高を記録。さらに2025年の1〜4月には、史上初めて両者が1000万台を突破した。新エネルギー車の販売は新車全体の42.7%を占めており、明確な成長を見せている。
また、新エネルギー車の輸出も加速している。2025年1〜4月には、全体の輸出台数が193.7万台、そのうち新エネルギー車は64.2万台と、前年同期比52.6%の増加となった。
新エネルギー車は中国製造業の象徴ともいえる存在となっているが、熾烈な価格競争が利益率をむしばみ続けている。国家統計局のデータによれば、2025年第1四半期の自動車業界の利益率は2020年の6.2%から3.9%にまで低下している。
こうした「内巻き競争」の裏では、多くの自動車メーカーが部品メーカーへの支払いを120日以上も遅らせるケースがあり、中には200日を超える企業も存在する。その結果、複雑な債務構造が形成されている。
この状況が続けば、中国の誇る技術力や産業チェーンの強みは、知らぬ間に損なわれかねない。
1台の新エネルギー車には1万点以上の部品が使われており、それに関わるサプライヤーも数万社に上る。完成車メーカーが支払いを遅らせれば、事実上、無担保かつ無利息の巨額資金を手にしているのと同じであり、リスクはすべて部品メーカー側が負担している形となる。
たとえば中国鉄鋼工業協会は、一部の自動車企業が自社のサプライチェーン金融プラットフォームを利用して上流の鉄鋼企業などに納品をさせたにもかかわらず、代金の支払いを数か月遅らせて企業手形で決済している実態を指摘している。これにより、本来は自動車企業が担うべき資金調達の責任とコストが、契約上の「支払い期日」という名目で上流企業に転嫁されているという。
自動車産業は国の製造業の中でも最も重要な柱の一つであり、その規模、サプライチェーンの長さ、経済波及効果、消費への影響力など、さまざまな面で経済成長のエンジンとして機能している。
その健全性を守るには、主要自動車企業による責任ある対応と模範的な行動が不可欠であり、今回の取り組みは評価されるべきである。ただし、実効性を高めるためには、支払い手続きの簡素化などの具体策も求められる。
自動車産業が規模の大小を問わず企業間の連携と革新を進めることでこそ、サプライチェーン全体の強靱性と安全性を高め、世界の自動車産業の未来をリードしていけるだろう。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News