■「勢力均衡」

個人資産が4050億ドル(約59兆円)と推定されるマスク氏は、2024年大統領選でトランプ陣営に2億7700万ドル(約403億円)を投じるなど、政治に対して金を惜しまない姿勢を既に示している。

しかし、最近のウィスコンシン州の最高裁判所判事を決める選挙で、マスク氏が2000万ドル(約29億円)を投じた候補者は惨敗。政治における富と名声の限界を浮き彫りにした。

さらに、米中央部、つまりシリコンバレーの「テック系」界隈に属さない有権者から支持を獲得するという政治的な難しさもある。

マスク氏はかつて、2021年に米誌タイムの「今年の人」に選ばれるなど、幅広い層の米国人から支持されていたが、トランプ政権に加わったことで、人気は急落した。

米国で最も尊敬されているデータ分析専門家の一人、ネイト・シルバー氏が発表した最新の世論調査によると、マスクの純好感度はマイナス18.1と低迷し、トランプのマイナス6.6を下回っている。 

メリーランド州にあるワシントン大学のフラビオ・ヒッケル准教授(政治学)は、「大ざっぱに捉えすぎるのは避けたいが、共和党支持基盤と米国を再び偉大に(MAGA)運動は、今の政治情勢においてほぼ不可分だ」と指摘。

「そして、最近の論争にもかかわらず、彼らのトランプ支持は揺るぎない。マスク氏絡みの政治プロジェクトがドナルド・トランプ氏を支持する個人から票を吸い上げるとは想像し難い」と続けた。

アナリストたちは、マスク氏のアメリカ党が議席を獲得するのは難しいという点で一致しているが、支持基盤の弱い現職共和党議員から票を奪ったり、トランプ氏が支持する候補者の主要な対立候補に資金を投じたりすることで、トランプ氏に痛手を与えることができると指摘している。

世界的な危機管理広報会社レッド・バニアンの創設者兼最高経営責任者(CEO)、エバン・ニアマン氏は、「イーロン氏の党は議席を獲得することはないだろうが、共和党にとって大きな痛手となる可能性がある」「接戦の選挙区では、右派からわずか数ポイントを吸い上げるだけでも、多数派交代につながる可能性がある」との見解を示した。(c)AFP