【7月6日 Peopleʼs Daily】人工知能(AI)の猛烈な発達は、我々に利便性をもたらす一方で、多くの人びとに懸念を抱かせてもいる。

 中国の人工知能スタートアップ企業「深度求索(DeepSeek)」が独自開発した生成AIに「人工知能に関して最もよく出る質問は?」と訊ねたところ、「人間の仕事はAIに置き換わるか?」と言う質問が最も多いとの回答が返ってきた。

  
 この問題は、実は新たに注目されたものではない。人類が人工知能に対して抱く好奇心と同じだけ、不安の方も昔から存在していた。現在「生成型人工知能」が爆発的に発展し、AIは水や電気のようにスマート生活の「基盤インフラ」となったため、古くからの問題にも、新たな緊急性が生じている。

 人類がAIをどう捉えるかは、まるで鏡のように、自らへの認識を映し出している。AIに対する不安の多くは、その正体がよく理解出来ていないことに起因しているのではないだろうか。そこでまず、我々は「AIとは何か」を見極める必要がある。

 技術的な側面から見れば、現在のAIは「人間と同じように思考する存在」ではなく、「学習機能を備えた機械」であると言った方がより正確だ。

 20世紀1950年代以来、科学者はコンピューターに人間の知覚や認知能力を付与する方法を模索してきたが、その成果は限定的なものだった。近年、ビッグデータ駆動型の深層学習や機械学習が重大なブレークスルーを起こしたが、その根本的な理論は、人間の脳の働きを模倣するのではなく、データに基づく統計的なモデリングである。
  
 詩を書くことを例に取ると、春花秋月、韻律や平仄(ひょうそく)は、人間にとっては感動や美学だが、AIにとっては一種の「暴力的な計算行為」であり、確率に基づいて文字の組み合わせを出力するだけのことだ。

 AIはより高度な「ツールボックス」や個人の能力を拡張する「拡張パック」のような存在であり、AIに人格を付与する必要はない。

「AIとは何か」を理解した上で、次に「どうすべきか」を考えよう。AIは「人手」に置き換わってしまうのか?

 一部の分野では、その可能性がある。身の回りを見渡せば、AIドライバー、AIメインキャスター、AI助教、AI医師がすでに活躍している。大規模推論モデルは質問に即答し、ロボット犬「山岳作業員」は軽快に動き回り、AI巡回ロボットは「空に昇り、地を這い」、情緒も安定し、疲れも知らない。これは「人手」では到底できないことばかりだ。
 
 しかしまた別の分野では、そうではない。AIは単なる道具に過ぎず、人間の独特の知覚、判断、審美感覚は代替できない。また、従来の職種の減少に伴い、新たな業態や職種が生まれてくる。歴史的に見ても、自動車が馬車に、印刷技術が手書き作業に取って代わった時に、短期的には失業者が増加したが、長期的には新しい雇用機会が元の何千万倍にもなった。

 それでは、AIは将来どのような機会をもたらすだろうか?

 その答えは今年の「政府工作報告」の中にある。「AIプラス」行動を継続し、デジタル技術と製造の優位性、市場の優位性をより効果的に結合させ、大規模モデルの広範な応用をサポートし、スマートコネクテッド新エネ車、AI搭載スマホやパソコン、スマートロボットなど次世代スマート端末とスマート製造装置の発達を大々的に推し進めると記している。

 オープンソースの大規模モデルにファンが殺到、ロボットのとても見事な720度2回転キックなどなど、今年は新年早々から、中国のAIイノベーションの「クール」な様子に、誰もが目を奪われてきた。スマート介護ロボットの研究開発と応用に力を入れ、人工知能を教育システムに組み込むなど、「AIプラス」行動は幾千もの産業分野に原動力を与え、それらはすでに動き出し、その動きは加速している。

 かつて蒸気革命や電気革命で機会を逃した中国は、今回の産業革命では、深く遠く将来を見据えている。「人工知能は新たな科学技術革命と産業変革の重要な駆動力」と位置付け、AIを戦略的産業としてトップダウン方式で発展させようとしている。

 中国のAI産業革命は、未来の産業配置から計算能力の配分や応用シーンの実現まで、着実な歩みを続けている。

 同時に、技術と倫理との間に存在するリスクに対し十分な配慮をし、AIの「善い利用」の確保のため、未然の対策を講じている。
  
「テクノロジーの善のための利用」とは、本質的には「誰もがより多くの機会を得られるようにする」ということだ。

 5000年以上の文明を育んだこの土地で、2億5000万人近いユーザーが、生成AIを熱烈に支持し、人工知能の核心的な産業規模は6000億元(約12兆600億円)に迫っている。ICチップ、アルゴリズム、データ、プラットフォーム、アプリケーションなど、産業チェーンのあらゆる段階で、イノベーションと起業の舞台が広がっている。
  
 ここで改めて「DeepSeek」の生成AIに「AIと比較して、人間の競争力は何か?」と質問してみた。

「人工知能は理性の延長で、人間は感性と理性の響き合いだ。危険なのは、機械が人間のように思考することではなく、人間が機械のように働くことだ」、このAIは、何とこのような回答を返してきた。

 我々は「人と機械が協力して働く時代」の準備が出来ているのだろうか?(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews