【三里河中国経済観察】グリーン転換が高品質成長の新たな原動力に
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【6月25日 CNS】中国国務院常務会議は5月23日、「製造業のグリーン・低炭素発展行動計画(2025–2027年)」を審議・承認し、横断的な生態系保護補償メカニズムの整備に関する方針を検討した。
これら二つの議題はいずれも「グリーン(緑)」というキーワードに焦点を当てており、これは「五つの発展理念」の一つであると同時に、中国型現代化の顕著な特徴でもある。グリーンは新時代中国を象徴する色合いとなっている。
今回の常務会議で製造業のグリーン転換と横断的生態系保護補償の整備が重点的に打ち出されたことは、どのような意味を持つのだろうか。
一つ目の「グリーン」:製造業のグリーン転換
会議では、製造業のグリーン・低炭素発展を「大勢の流れ」と位置づけ、グリーン技術革新の加速と先進技術の普及を推進し、新型工業化の基盤をグリーンで強化する必要性が示された。
改革開放以来、中国は資源の節約と環境保護を国家の基本政策としてきた。しかし数十年に及ぶ急速な発展により、資源・環境の許容量が限界に近づきつつあり、高投入・高消費・高汚染型の従来の成長モデルは持続不可能となっている。
特に製造業において、グリーン・低炭素への転換は環境対策にとどまらず、産業の持続可能性を左右する戦略的選択となっている。
中国の製造業のグリーン転換は「深水域」に入りつつあり、この難関にどう立ち向かうべきか。会議の内容から読み取れるのは、「破壊と構築」を織り交ぜた転換ルートである。
■減らす(削減)
伝統産業の徹底的なグリーン化を進め、大規模な設備更新などの政策と連動させ、先進的な設備や技術を導入することで、重点産業のグリーン化改修を加速する。
たとえば、鉄鋼・化学といった業種では、老朽設備の淘汰とグリーン改修の同時進行により、先進製造業を基盤とした現代的な産業構造の構築が可能になる。
2025年4月には、工業情報化部の関係者が「設備更新と技術改造の推進は有効投資の拡大と先進的生産能力の比率向上につながり、短期・長期の双方にメリットがある」と述べている。
■増やす(強化)
新興産業に対しては、高い起点からのグリーン発展を導き、クリーンエネルギーやグリーン製品の普及、資源循環利用の高度化を図る必要がある。
新エネルギー、新素材、デジタル経済などの分野では、計画段階からグリーン基準を設け、炭素排出や資源効率などの指標に厳格な制約を加えることが求められる。
また、共通技術の研究強化、重点分野の標準整備、関連政策の最適化、グリーン製造・サービス体系の整備を通じて、企業の転換・高度化を支援していくとした。
次に二つ目の「グリーン」:生態系の保護と補償
今回の会議では、製造業のグリーン生産に加え、生態系の保護にも焦点が当てられた。会議では、横断的な生態系保護補償制度の整備についても検討された。
生態系補償には、縦の補償(中央政府による移転支出など)と横の補償(例:上流が水質保全すれば、下流の受益地域が上流に資金支援を行う)という2種類がある。
実際、横断的補償の分野では、すでにいくつかの成功例がある。
2012年、財政部と元環境保護部、安徽省(Anhui)と浙江省(Zhejiang)は「新安江流域の水環境補償協定」を締結し、流域をまたぐ生態補償制度をスタート。2022年までに中央・両省からの補償金は累計57億元に達した。
しかしながら、制度面では依然として詳細な実施要綱の欠如や、民間からの参加が乏しいといった課題も残されている。
今回の会議では、「コストを分担し、利益を共有し、協力して保護する」という方針での横断的補償制度の確立が打ち出され、上位レベルでの制度設計が一歩進められた。
また、長江(揚子江、Yangtze River)や黄河などの大河本流における横断的補償制度の拡充、さらには森林、草原、大気などへの補償制度の探求も推進されることになった。
今回、製造業のグリーン転換と生態系補償制度の整備という2本柱での国務院の重点政策は、制度革新によってグリーン改革を促すという戦略的選択を示すとともに、中国が「体系的思考」によってグリーン発展を推進していくという明確なメッセージを世界に発したと言える。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News