英下院、「安楽死」法案可決 歴史的な一歩 懸念点を指摘する声も
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【6月21日 AFP】英下院は20日、終末期患への安楽死を導入する法案について4時間にわたる討議を行い、賛成314、反対291で可決した。これにより英国は、安楽死を認める歴史的な一歩を踏み出した。今後、上院で審議される。
法改正により、ベルギーやオランダなど、何らかの形での安楽死を認めている欧州その他の国々を模倣することになるとみられる。
「終末期成人法案」で、ほう助自殺が認められるのは、イングランドとウェールズ居住で、余命6か月未満と診断された成人。医師2人と専門家パネルの承認を受けた上で、致死性薬物を自ら摂取しなければならない。
法案を提出した労働党のキム・リードビーター議員は、20日の第3読会での討議で、法改正により末期患者に「思いやりのある、安全な選択肢が提供される」と主張。
現状維持は、より多くの「痛ましい話」、「痛みや苦しみ、自殺未遂、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、(安楽死が認められている)スイスへの孤独な旅、警察による捜査」をもたらすだろうと述べた。
しかし、同じく労働党のビッキー・フォックスクロフト議員は、この法案には障害者のための十分な安全策が含まれていないと指摘。
「私たちは、(安楽死を)強要されやすい人々、社会から自分は無用と思われているように感じている人々、国や社会、そして自分の家族の負担になっていると思いがちな人々を守らなければならない」と訴えた。
議会の外には、賛成派と反対派が集まっていた。
デービッド・ウォーカーさん(82)は、60年間連れ添った妻が亡くなる前に3年間苦しむのを見ていたため、法改正を支持すると主張。
「もう妻を助けることはできないが、今の私は、同じような状況にある他の人々の力にはなれる。生活の質が失われると何も得られない」とAFPに語った。
一方、医師のエリザベス・バーデンさん(52)は、この法案がいったん認められると「危険な坂道」の始まりとなり、安楽死の対象者が拡大するのではないかと心配だと話した。
「一度許可されると、すべてがずるずるとなし崩しになるのではないか。認知症患者を含め、すべての患者が脆弱(ぜいじゃく)だからだ」と懸念を示した。
法案は、上院の現会期中、おそらく秋までに承認されなければ廃案となる。
可決され、国王の裁可を得たとしても、自殺ほう助が導入されるまでにはさらに4年かかる見通しだ。
今月発表された政府の影響評価では、この制度を利用する患者は初年時に約160〜640人、10年間で最大4500人に増加する可能性があると推定されている。
現在、自殺ほう助は、イングランド、ウェールズ、北アイルランドで14年以下の禁錮刑が科される。
スコットランドでは、安楽死を合法化する法案が議会で審議されている。
マン島の議会は今年3月、英領で初めて安楽死を認める法案を可決した。(c)AFP