【三里河中国経済観察】河南、製造業の質的転換を加速
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【6月20日 CNS】1954年、新中国の「第1次五か年計画」における156の重点プロジェクトの一つとして洛陽軸受工場(通称「洛軸」)が設立された。他国からの援助に依存するところから始まり、自主的な技術開発を重ね、70年以上にわたり航空エンジン用軸受や鉄道交通用軸受といったコア技術を徐々に習得し、中国の戦略的重要機器に欠かせない部品を鍛え上げてきた。
洛軸は、河南省(Henan)、さらには中国全体における製造業の高品質な発展を象徴する存在だ。伝統的な農業大省が新興工業大省へと飛躍する過程において、その実績を裏付ける数多くのデータがある。
中国中鉄(REG)装備のシールドマシンは世界市場シェア1位、衛華集団(Weihua Group)のクレーンは中国国内シェア1位・世界2位、中国一拖集団(YTO Group)の中大型トラクターは国内市場シェア1位――。
河南省の製造業は、どうやって農業大国としてのパターン依存を打破し、製造分野での飛躍と変貌を遂げたのか。その背景には、中国製造業の転換と高度化を映し出す深層的な動きがある。
■第一は「安定」
ここでいう「安定」とは保守的であることではなく、新旧エネルギーの切り替えを支える重しのような役割を意味する。河南省の工業規模は全国で第5位、中西部地域では第1位を長年維持している。
しかし長らく、同省では従来型産業の割合が高く、製品の付加価値が低かった。とくに石炭や冶金などの重化学工業が主力で、「鈍くて重い」という評価も少なくなかった。
ただ、伝統産業は近代産業システムの土台であり、それをいかに長く持続可能なものにするかが課題だった。
その鍵の一つが技術改造だ。河南省はこの分野に大きな力を注いできた。2020年には固定資産投資に占める工業技術改造の割合が6.2%だったが、2023年には8%まで上昇している。
「古い木に新しい芽を育てる」取り組みは、はっきりとした成果を見せている。
2025年第1四半期、河南の伝統的な主力産業の付加価値は前年同期比6.7%増加し、前年を2.6ポイント上回った。冶金や軽工業・繊維産業といった従来産業は、デジタル改造を通じて成長率の回復とエネルギー消費の低減を同時に実現している。
中国は産業体系が最も多様な世界最大の製造大国だ。全国的に見ると、伝統産業は製造業の8割以上を占めており、これらに対して技術改革と設備投資を促進し、新技術によって高付加価値化・スマート化・グリーン化を図ることが、新しい産業化の実現にとって不可欠な道となっている。
■第二は「進化」
製造業の高品質な発展は、伝統産業のアップグレードによる安定した推進だけでなく、新興産業の加速的な成長によっても支えられている。
かつて河南省の工業生産力の急成長を支えたのは、冶金、軽工業・繊維産業、エネルギーなどの伝統的産業だった。今では、新素材、電子、自動車、装備、食品の5大主導産業が、河南工業経済の新たな柱となっている。
2025年第1四半期、これら5大産業の付加価値は前年比11.3%増で、全省の規模以上工業(一定規模以上の企業)付加価値の成長率を2.5ポイント上回った。中でも装備・食品・自動車及び部品産業は、それぞれ1.6、1.4、1.2ポイントの成長寄与を果たした。
イノベーションという「変数」を、どれだけ成長の「最大増量」に変えられるか――ここに新興産業の成否がかかっている。
全国を見渡せば、人工知能(AI)、脳型AI、量子技術、原子レベル製造、生物製造、人型ロボット、低空経済、そして水素エネルギーといった分野が活況を呈している。
中国は今、こうしたコア技術への取り組みを加速させ、新興産業クラスターの構築に力を注ぎ、高品質成長の新たな優位性を築こうとしており、全体として着実な上昇傾向にある。
■第三は「高度化」
産業構造の変化は、産業そのものの水準を引き上げる。
今日の河南省では、軸受、スマートフォン、新エネルギー車といった「現代河南製造」の象徴が、量から質への転換を進め、労働集約型からイノベーション主導型へと進化している。
中原科学技術都市、サーバーや周辺機器の製造・販売を手掛ける「超聚変(xFusion)」の研究開発センターおよび本社、国家スーパーコンピューターセンターといった大型プロジェクトの牽引のもと、2024年には河南省のハイテク製造業への投資が前年比20.9%増加。うち航空宇宙機器製造業は前年比260%、コンピュータおよび事務機器製造業は170%の伸びを記録した。
2025年第1四半期には、高付加価値のスマート製品が好調に販売され、サービスロボットと新型集積回路の生産量がそれぞれ140%、58.3%増となっている。
河南製造業のレベルアップは、産業チェーンの高度化、製品の付加価値向上、国際競争力の強化という3つの面に現れており、それはすなわち中国全体の製造業が「質を高め、新たな方向へと突き進む」ことの生きた証でもある。
製品が「無」から「有」へ、構造が「低」から「中・高」へ――河南の製造業は、「安定」「進化」「高度化」を通じて絶え間なく成長しており、これはまさに中国現代製造業が自主イノベーションの道を歩む縮図である。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News