【6月19日 AFP】米ジョージア州で脳死状態にあった妊娠中の黒人女性が、人工妊娠中絶を制限する州法により生命を維持されて出産し、その後、生命維持装置を取り外されたと当局が発表した。

2022年6月に連邦最高裁が中絶の権利を認めた判決を覆して以降、アドリアーナ・スミスさんは全米の注目を集めていた。

民主党の女性下院議員3人は、「2025年6月13日、スミスさんの息子チャンスちゃんが午前4時41分ごろ、緊急帝王切開で早産児として生まれた」と発表。

「体重は約822グラムで、現在、新生児集中治療室にいる」とし、スミスさんは17日に生命維持装置を取り外されたと明らかにした。

今年2月、看護師のスミスさん(当時30)は妊娠9週目だった時に激しい頭痛に見舞われた。最初に受診した病院では薬を処方されただけで、翌朝、勤務先の病院に搬送された際、脳内に複数の血栓が見つかり、脳死と宣告された。

ジョージア州法では妊娠6週以降の中絶を禁止している。こうした州法は、胎児の心拍が初めて確認された時期に基づく「心拍法」と呼ばれている。

母親のエイプリル・ニューカークさんは、スミスさんは妊娠9週目だったため、医師らは州法に違反しかねない処置を講じることに及び腰だったと指摘。

5月中旬に地元のNBC放送局WXIA-TVに対し、「こうした決断は、本来なら(州法の制約を受けずに)私たちに委ねられるべきだった」とし、「私たちが実際に妊娠中絶を選んでいたかどうは別として、私たちに選択権が与えられるべきだった」と主張した。

3人の女性議員は、妊婦の権利の保護強化を求め、「特に、制度・構造的に医療を受けにくい立場に置かれ、厳格な中絶禁止法によって不当な影響を受けている黒人女性」の保護を訴えている。

「正式な法的見解や起訴に関する指針がないため、当事者の家族や医師が不安定な状態に置かれている」とし、この問題に関する決議案を議会に提出している。(c)AFP