【6月18日 CNS】中国では「六一国際児童節(こどもの日、6月1日)」とちょうど重なった今年の端午節(たんごせつ)連休は、まさに「子どもも大人も楽しめる」ダブル祝日となった。

 今年の端午節には、延べ約7億人が移動する大型連休となった。中国交通運輸部の予測によれば、2024年の端午節連休中、全国の越境を含む人の移動数は延べ6億8700万人に達し、前年同期比で約7.7%増加したとみられている。

 国境をまたぐ出入国者数も大幅に増えた。国家移民管理局の発表によると、連休期間中、全国の1日あたりの出入国者数は平均215万人となり、前年の端午節と比べて12.2%増加した。

 都市の通りや駅、空港、観光地や商業エリアでは、国内外の旅行者が行き交い、混雑のなかにも祝日経済の活力がはっきりと表れていた。

■ドラゴンボートの太鼓が都市を揺らした

 端午節といえばやはりドラゴンボートで、多くの川や湖が熱気に包まれた。

 太鼓の音と応援の掛け声が鳴り響き、スピードと熱狂が交差するなかで、「一艘のドラゴンボートが一都市の観光を活性化させる」構図が明確になった。

 広東省(Guangdong)仏山市(Foshan)の叠滘村の川辺では、観光客たちがスマートフォンを構え、「ドラゴンボートドリフト」と呼ばれる迫力のレースを見ようと詰めかけた。伝統文化に現代のエンタメ性が加わったドラゴンボートレースは、観光客の「必見イベント」となっていた。

 このドラゴンボートレースによる「経済の波紋」も広がりを見せた。オンライン旅行プラットフォームのデータによれば、端午節期間中の仏山市の観光予約件数は前年同期比で167%増、ホテル予約は145%増、航空券予約は110%増となった。戦国時代の楚の国の著名な詩人で政治家でもあった屈原(Qu Yuan)の故郷である湖南省(Hunan)汨羅市(Miluo)や、粽子(ちまき)の名産地・浙江省(Zhejiang)嘉興市(Jiaxing)にも多くの観光客が訪れていた。

 こうした「イベントによる観光促進」の手法が、伝統文化を都市成長の新たな原動力として押し上げていた。

■童心あふれる休日が消費意欲を後押しした

 端午節と六一国際児童節が重なったことで、親子旅行市場が大きく賑わった。

 旅行予約サイト「携程(Trip.com)」によれば、親子旅行の予約が全体の35%を占め、親子向けホテルの検索件数は前年同期比で45%増となった。また「去哪儿(Qunar)」では、親子向け宿泊施設の予約が51%増加した。

 また、無形文化遺産の体験イベントも人気を集めた。手作り体験や屋外劇場、昔ながらの遊びや伝統的な集いなど、生活感あふれるアクティビティが訪れた人びとに没入型の文化体験を提供していた。

 テーマパークも高い人気を集め、北京ユニバーサルスタジオ(Universal Studios Beijing)、上海ディズニーリゾート(Shanghai Disney Resort)、香港ディズニーランド香港ディズニーランド・リゾート(Hong Kong Disneyland Resort)、広東省(Guangdong)の長隆野生動物世界(Chimelong Safari Park)、珠海長隆海洋王国(Zhuhai Chimelong Ocean Kingdom)などが親子旅行の定番スポットとしてにぎわった。

 伝統文化と子ども向けイベントが交わることで、消費の活力は一段と広がりを見せていた。

■クルマの旅が新たな旅スタイルに

 今回の連休では、民俗文化体験ツアーや都市間をまたぐ自家用車による深度游(時間と体力を自分のペースで消費し、旅先の空間にある自然や芸術品を心行くまで堪能すること)が、2大トレンドとなっていた。

「自家用車+民俗体験」という新たな旅のスタイルは、「バスで寝て着いたら写真を撮る」ような旧来型の観光ではなく、現地での体験を重視する傾向を反映していた。

 湖南省汨羅市のドラゴンボートレースや、広東省仏山市の「ドリフトドラゴンボート」、福建省(Fujian)泉州市(Quanzhou)の無形文化遺産市など、各地の文化的シンボルが旅行者の足を引き寄せ、レンタカーの需要も急増。あるレンタカープラットフォームによれば、端午節期間中の予約数は過去最高を更新したという。

 交通運輸部によれば、京津冀(北京・天津<Tianjin>・河北<Hebei>)、長江デルタ地域(上海、江蘇省<Jiangsu>、浙江省)、粤港澳大湾区(広東・香港・マカオグレーターベイエリア、Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area)、成渝地区(成都市<Chengdu>と重慶市<Chongqing>)が人気の出発・観光エリアとなり、特に広州市、北京市、成都市、深セン市(Shenzhen)、上海市などが旅行先として大いににぎわった。

 この連休、人びとはドラゴンボートレースで熱狂し、自然の中で心を癒やし、テーマパークで童心を取り戻した。約7億人が移動したこの数日間は、伝統と現代が交差する美しい風景を描き、中国経済のしなやかさと活力を改めて映し出していた。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News