【6月17日 CNS】国連(UN)の「文明の対話国際デー」と中国の「文化・自然遺産の日」を前に、「2025京津冀古建築音楽祭」が6月10日、千年の歴史を誇る大運河沿いの北京・通州区にある燃灯塔のふもとで正式に開幕した。京津冀(北京・天津<Tianjin>・河北<Hebei>)の三地域が、それぞれの文化遺産資源を統合して、広域的な文化エコシステムとして文化財(文物)活用を図る初の取り組みとなる。北京市の専門家は、「古建築+音楽」をキーワードとした京津冀の連携によるこの新たな試みが、中国における文化財活用の新モデルの探求と発展につながると述べている。

「古建築音楽祭」は2021年に始まり、政府の指導、企業の運営、社会の参加という原則に基づき、「古建築+音楽」という形で文化財の活用を目指すブランドイベントである。今年は北京市・天津市・河北省の協力による新たな方式のもと、「古建築対話」メカニズムを初めて導入。文化財・博物館の専門家や芸術家が市民と直接対話し、「保護と活用」をテーマに意見を交わすほか、ショート動画やライブ配信といったメディア技術を活用し、専門的な文化財保護を公共の文化サービスとして広く届けていく。

 2025年の音楽祭は「燕趙の響き・三垣にこだまする」をテーマに、「融合(融)」の理念を核に据えて開催されている。開幕当夜の「サプライズ演出」では、中国と海外の音楽家4人が共演し、琵琶・馬頭琴・ピアノ・インドのタブラを用いてアストル・ピアソラ(Astor Piazzolla)の『リベルタンゴ(Libertango)』を演奏。多彩な音色が交差する新しい音楽体験を観客に届けた。演奏後、国際的ピアニストの田佳鑫(Tian Jiaxin)氏は中国新聞社(CNS)の取材に対し、「音楽には国境がなく、形式を超えた融合によって心を打つ力が生まれることを願っている」と語った。

「古建築+音楽」は単に文化財の中で音楽を演奏・鑑賞するという枠にとどまらない。中央文化・観光幹部学院の副研究員・孫佳山(Sun Jia)氏は、歴史的建築の空間で建築・音楽・美術・歴史・人文に触れる没入型体験が、文化財の価値を新たな角度から捉える契機となると指摘する。彼は「文物活用」とは、創造的手法を通じて文化財を現代の生活に取り込み、その文化的価値を発揮させることだと述べ、「古建築音楽祭」のモデルは文物活用の概念と多層的に関係していると語った。

 音楽祭の各公演では事前に建物の音響構造を調査し、文化財としての建築そのものへの敬意を払っているという。孫氏によれば、これは文化財そのものではなく、その空間を活用する「空間の活性化」に重きを置いたものであり、閉ざされがちな文化財の空間を演奏の場として開放することで、文化的体験の場へと転換する試みでもある。さらに、「政府主導+企業運営+社会参加」の組織体制によって、この文物活用モデルの持続可能性も高まっていると分析している。

 今回の音楽祭は、京津冀地域での初の広域開催となり、地域を超えた文化遺産の保護・継承と社会的発信において、文化財部門が連携して取り組む新たな一歩でもある。音楽祭は10月上旬まで続き、孔子廟と国子監博物館、北京大覚寺など10か所以上の歴史的建築を会場に、国内外の優れたアーティストや伝統文化の継承者たちが登壇し、時を超えた「文化共鳴帯(共振)」を創出する。

 孫氏は、「この『文化共鳴』は、文化財の社会的価値の広がりに表れており、京津冀三地の観光・文化消費の促進だけでなく、文化遺産保護にもつながる。文化保護と都市発展が好循環を生むことが期待される」と話した。

 彼はまた、「京津冀による文物活用の連携モデルは、三地の文化財を『残す』から『生かす』段階へと導く重要な試みだ。芸術の力を介して、文化財が歴史と現代、専門家と一般市民を結ぶ架け橋となり、今後の文化遺産活用の模範モデルとなるだろう」と述べている。(c)CNS/JCM/AFPBB News