【6月14日 AFP】偽情報監視団体ニュースガードの研究者らは13日、ロサンゼルスでの不法移民摘発に対する抗議デモに関する偽情報を、ロシア、中国、イランが拡散し、米国内での虚偽情報や陰謀論の氾濫に拍車をかけていると明らかにした。

この調査結果は、米国の外敵が情報戦術として、米国社会の根深い分断をいかに利用しているかを示している。

ニュースガードによると、ロシア、中国、イランの政府傘下の情報源が、最近ロサンゼルスで発生した抗議デモに関する投稿や記事約1万件を公開し、ロサンゼルスを「米国終焉(しゅうえん)の始まりの地」と位置づける虚偽の主張を展開している。

ドナルド・トランプ米大統領とカリフォルニア州のギャビン・ニューサム州知事の政治的対立に乗じ、X(旧ツイッター)の親中派アカウントや、「抖音(ドウイン)」や「微博(ウェイボー)」などの中国系プラットフォームは、カリフォルニア州が米国から離脱し、独立を宣言する準備ができているとの根拠のない主張を広めている。

一方、イランを拠点とする新聞各紙は、アンディの芸名で知られる人気イラン人シンガーソングライターのアンドラニク・マダディアンさんがロサンゼルスで州兵に拘束されたという虚偽の主張を広めている。米国を権威主義国家として描こうとする試みとみられる。

ニュースガードは、マダディアンさんがこの主張を否定し、「私は大丈夫。どうかうわさを信じないでほしい」と述べたと報じた。

ロシアメディアや親ロシア派インフルエンサーは、メキシコ政府がトランプ氏の移民政策に反対するデモをあおっているとの根拠のない主張など、右派陰謀論を広めている。

ニュースガードの研究員、マッケンジー・サデギ氏はAFPに対し、「(ロサンゼルスの)抗議デモは、制度への信頼低下、AI(人工知能)チャットボットによるデモに関する偽情報の増幅、政治的二極化、主要プラットフォームによる安全とコンテンツモデレーションの取り組みの後退など、複数の脆弱(ぜいじゃく)性が交差する中で展開している」と説明。

「その結果、外国勢力は過去の騒乱時と比べて障壁に直面することなく、より速いペースでこの地域に虚偽情報を氾濫させる絶好の機会を得ている」と付け加えた。

サデギ氏は、ロシア、中国、イランの3か国間が明らかに連携している点は注目に値すると指摘。

「ロシア、中国、イランは通常、それぞれ独自の偽情報を発信しているが、今回のような協調的な動きは珍しい」「今回は、地政学的利益を推進し、自国内の危機から注意をそらすために、国営メディアが発信をエスカレートさせている」と述べた。

こうした偽情報は、米国を拠点とするインフルエンサーが広めた虚偽のナラティブに加えて発信されている。

ここ数日、保守派のソーシャルメディアユーザーは、レンガの山の写真2枚を拡散させ、カリフォルニア州の抗議デモ参加者が警官隊に投げつけ、暴力をあおるために戦略的に配置されたものだと主張している。

これらの写真は、長年にわたり極右に嫌悪されてきた億万長者で慈善家のジョージ・ソロス氏が支援する非営利団体が抗議活動をあおっている証拠として挙げられている。

だが、AFPのファクトチェッカーは、写真の1枚がマレーシアの金物販売業者が数年前にオンラインマーケットプレイスにアップロードしたもので、もう1枚は米ニュージャージー州の建設現場付近で撮影されたものであることを確認した。

トロント・メトロポリタン大学の研究センター「ソーシャルメディアラボ」はSNSのブルースカイで、「大衆による抗議デモが行われるたびに、『レンガのパレット』というクリックベイトのような使い古されたデマが、絶好のタイミングで現れる」と指摘。

「このような偽画像が使われているのは偶然ではない。政府の政策に対する抗議デモはなんとなく信頼できないという、悪質かつ根強いナラティブの一部だ」と続けた。(c)AFP