240時間ビザ免除で中国体験型観光が人気に
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【6月10日 CNS】中国で240時間(10日間)のトランジットビザ免除政策が導入されて以来、外国人観光客の訪中スタイルに変化が見られている。かつての「立ち寄り観光」から、中国文化を深く味わう「体験型観光」へとシフトしており、陶磁器や中国伝統医学の(中医学)体験が特に人気を集めている。
山西省(Shanxi)景徳鎮市(Jingdezhen)で陶磁器の美を体感する旅は、長年にわたり外国人観光客に人気の高いコースとなっている。240時間のビザ免除政策が始まってからは、工芸品マーケットの散策や陶磁器づくり体験などを目的に、より多くの外国人が景徳鎮を訪れている。2025年1月から4月のあいだに、景徳鎮を訪れた外国人観光客は延べ8000人で、前年同期比27%増となった。
インドネシアから来たトゥティ・ハディプルナミ(Tuti Hadipurnami)さんは「インドネシア近海の沈没船から多くの中国陶磁器が発掘されたことに関心を持ち、景徳鎮を訪れてその源流をたどりたかった」と語っている。
景徳鎮の陶溪川創意市集は、外国人観光客の「必訪スポット」のひとつだ。週末には各国・地域から訪れた職人たちが自作の作品を販売しており、その中には中国の陶磁器技術と他国の文化を融合させたユニークな品も少なくない。
景徳鎮では、職人の陶磁器づくりを間近で見学できるほか、プロの指導のもと自分で絵付けや成形体験もできる。多くの外国人が袖をまくってロクロを回し、釉薬を塗り、自分だけの作品づくりに熱中している。陶磁器づくりの工程を深く知ることができ、中国陶磁器の魅力を実感できるのが特徴だ。陶溪川の体験工房では、1回あたり約200元(約5000円)でこのような体験ができる。
また、中医学に基づく「ウェルネスツーリズム」も、訪中外国人の間で急速に人気を高めている。海南島南端の三亜市(Sanya)では、温暖な気候と「冬の病を夏に治す」という中医学の理論を活かし、三伏貼(夏場に貼る温灸療法)、鍼灸(しんきゅう)、マッサージなど多彩な施術を提供しており、とくに寒冷地出身の観光客、特にロシア語圏からの旅行者に好評だ。
三亜市の医療機関では多言語翻訳や各種支払い方法への対応など、外国人観光客の利便性にも配慮している。三亜国際友好中医療養院の副院長・薩仁(Sa Ren)氏は、「外国人観光客の医療ニーズに対応するために、特色ある診療部門を設け、英語やロシア語の通訳も配置しています」と語る。
黒竜江省(Heilongjiang)も国境の地理的優位を活かしてロシアからの旅行者を引き寄せており、鍼灸、推拿(整体)、中医薬などを提供し、慢性痛やリウマチなどの治療を行っている。統計によると、中国を訪れるロシア人旅行者のうち70%が中医学に強い関心を示しており、5万人以上がリハビリや中医学、高度医療を受けるために来中しているという。
広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の南寧市(Nanning)では、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国の中~高所得層をターゲットに、薬膳や「チワン族・ヤオ族の薬草風呂」、眼診、推拿など多彩なサービスを展開。北京市は、中国で最も質の高い中医資源を有しており、宮廷医療の展示や薬膳体験、砭石(へんせき、鍼灸療法の起源ともされる中国伝統医学の一部)療法など無形文化遺産を活かした「ウェルネス観光」ルートを複数展開している。代表的な施設には、鼓楼中医医院や同仁堂(Tongrentang)などがある。
北京観光学会の監事長・蔡紅(Cai Hong)氏は、「外国人観光客による中国への深掘り旅行は、観光地の飲食、買い物、娯楽、教育、医療といった関連産業の発展をけん引するだけでなく、中国の生活様式や価値観、伝統的な習慣を体感する機会にもなる。これにより誤解や偏見を打ち消し、各国民の相互理解と友情を深めることができる」と述べている。(c)CNS/JCM/AFPBB News