【6月7日 東方新報】5月下旬以降、中国の自動車業界では再び大規模な値下げの波が押し寄せている。これを受けて、中国汽車技術研究センターの董事長である安鉄成(An Tiecheng)氏は、自動車業界は「過剰競争」の是正に本腰を入れて取り組む必要があると強調した。

 安氏は、「過剰競争」が業界に及ぼす悪影響について、まず第一に経営効率の低下を挙げている。2024年の自動車業界の利益率はわずか4.3%であり、2025年第1四半期にはさらに3.9%まで低下。これは製造業全体の平均を下回る水準であるという。

 また、過剰競争は製品品質とアフターサービスに対するリスクも引き起こす。安氏によれば、こうした競争の結果、部品調達価格は毎年10〜15%の割合で下落を続けており、その影響で上流のサプライヤーの経営が悪化し、品質に対する要求を引き下げざるを得ない状況に追い込まれている。さらに、下流のディーラーの経営も厳しくなり、一部は倒産しており、これがアフターサービスの迅速さ・利便性・信頼性の低下を招いている。

 では、なぜ過剰競争が起きるのか。安氏は、複数の要因が絡み合っている結果であると指摘する。現在、中国の自動車市場は成長の鈍化を迎え、ストックベース(保有車数ベース)の競争段階に突入したことが最大の要因だ。2024年、中国の自動車販売台数は約3143.6万台で、前年比4.5%増。過去10年の平均成長率6%を下回っており、国内販売に限れば2557.7万台、前年比1.6%増とさらに低い伸びにとどまっている。

 次に、業界構造がまだ理想的な状態に達していないことも原因として挙げられる。2024年時点で、中国には完成車の生産資格を持つ企業が200社以上存在しており、その中には本来淘汰されるべき低効率な企業が数多く残存している。これらが低価格戦略に頼って生き残りを図ることにより、優良企業の経営空間が圧迫されている。

 さらに、技術革新の推進力が不足していることが、製品の同質化競争を激化させている。弱い企業はそもそも研究開発能力を持たず、一方で大手企業も価格競争に巻き込まれて利益が圧迫され、研究開発への投資意欲が下がっているのが現状だ。

 安氏は、「現在の中国の自動車産業は『自動車大国』から『自動車強国』への転換期にあり、その過程では一定の競争激化や自然淘汰が避けられない」と述べる一方で、「一部のグレーゾーン的な行為が有効に規制されておらず、市場競争が理性を失った『過剰競争』へと変質してしまっていることも問題だ」と警鐘を鳴らした。

 このような過剰競争に対して、安氏は総合的な是正措置が必要だと提言する。第一に、トップダウンの制度設計を強化し、規制と誘導のバランスを取りながら業界の転換を促す必要がある。そのためには、実効性のある監督制度を打ち出し、企業や製品の市場参入条件を厳格化するべきだという。

 第二に、業界内部における自律メカニズムを構築し、技術革新と品質向上によって競争を乗り越える体制をつくることが求められる。

 第三に、消費者市場に向けた広報・啓発活動を強化し、社会全体で関わるかたちで、健全な市場監視体制の構築を目指すべきだと述べた。(c)東方新報/AFPBB News