【6月8日 Peopleʼs Daily】今年2月に開かれた「第61回ミュンヘン安全保障会議」において、多極化は各国の注目の的、議論の焦点となった。

 現在の世界は多極化の方向へ進んでいるのか?多極化は国際秩序の混乱を招き、統治の機能不全を招くのか?世界の多極化の健全で安定した発展を推進するためには、どのようにすべきか?

 注目が集まるこの3つの重要な疑問は、国際秩序の安定、そして世界の平和と発展に関わっている。

■世界は多極化の方向に向かっているか?

 世界の多極化は、歴史の必然であり、現実のものとなりつつある。ミュンヘン会議に先立って発表された「2025年ミュンヘン安全保障報告書」では、「多極化」をメインテーマとして、「我々はすでに多極化によって形作られた世界に住んでいる」と明確に指摘している。

 そしてこの判断は、現在の国際社会の主要な認識と一致する。

 国際関係において「極」とは、国際体系の枠組みの中で重要な役割を果たす政治経済的な力を指す。多極化の本質は、国際的な権力とグローバル・ガバナンスが少数の国家の独断から、多国間の協議・協力・共有へと移行することである。

 90年代初頭、冷戦の終結に伴い「世界の二極構造」が完全に崩壊し、世界は多極化へと加速的に進んだ。

 各国・各地域は、国際秩序において自らの地位を確保し、国際問題への対処において自主性を発揮し、より大きな役割を果たすことを望んでいる。

 現在、多極化は国際勢力関係の変容を直観的に反映する現象となっている。国際通貨基金(IMF)のデータによれば、23年新興市場経済体と開発途上経済体の国内総生産(GDP)は世界全体の58.9パーセントを占めている。「2025年ミュンヘン安全保障報告書」によると、新興5か国(BRICS)の世界貿易と原油生産・輸出量はそれぞれ世界の約40パーセントを占めている。これは単なる経済発展の物語ではなく、国際的秩序の構造変革の基盤をなすものでもある。

 伝統的に欧米が主導してきた「ミュンヘン安全保障会議」で、今年は約30パーセントの講演者がグローバル・サウス諸国の出身だった。これはまさに世界の多極化の縮図だと言えよう。グローバル・サウス諸国は、国際問題の処理において、より自主的で自信を持ち、ブリックス諸国や上海協力機構(SCO)などのプラットフォームを通じて国際関係の民主化を推進し、世界の多極化のプロセスに重要な推進力となっている。

「2025年ミュンヘン安全保障報告書」は、多極化は物質的な力の拡散だけでなく、世界が意識形態の面でより多様化していると指摘している。

 冷戦終結直後に一時的に盛んに唱えられた「歴史の終焉論」は完全に過去のものとなり、多くの開発途上国は自主的な発展の道を探求する決意と自信を強めている。異なる文明の平等な交流と相互理解が「グローバル・サウス」の共通の選択肢となっている。

 多極化は歴史の発展方向だが、そのプロセスは一朝一夕に実現するものではない。世界の多極化の潮流に対し、国際社会の中には迷いがある者もいれば、流れに逆らう者もいる。

「ミュンヘン安全保障会議」では、依然として「単極」「二極」など、現実とすう勢を誤解している声も聞かれた。それでも、歴史の長い周期から見れば、多極化のプロセスは個人の意志によって方向転換されるものではなく、曲折を経て力を蓄えながら進展していくものであろう。

■多極化は国際秩序の混乱を招くものなのか?

 現在、国際情勢は混乱と変動が交錯し、単独主義、保護主義の台頭が顕著となり、世界は「ジャングルの法則」に戻りかねないリスクに直面している。

 一部の人びとは責任を多極化に転嫁し、多極化した世界は必然的に分断化、無秩序化、衝突化の世界になると主張している。

 世界の混乱を多極化に帰そうとする考え方は、まさに「因果を逆転させる」ものだ。多極化は、現在世界が直面する問題の「原因」なのではなく、むしろ一部の国家が多極化の流れに逆らい、一国主義の衝動を抑えきれないことで、この世界を混乱に陥れていると考えるべきだ。

 いわゆる「脱鉤断鏈(連携を断ち切る)」「小院高塀(小さい屋敷に高い塀をめぐらす)」などの行為はグローバル経済協力を混乱させ、容易に国際機関から脱退したり、一方的な圧力をかけたりする態度は、国際多国間協力を深刻に損なっている。これらの行為の根源は、単極覇権への執着、ゼロサム思考の固守、多極化の大勢への抵抗にある。

 多極化を「混乱の処方箋」と位置付ける主張は、権力の移転への焦りを反映している。近年、国際秩序を主導してきた一部の国々は、多極化プロセスの急速な進展に明らかに適応できず、幻想に浸った「黄金の過去」に迷い込んだり、いわゆる「覇権による安定」を鼓吹したり、いわゆる「自由主義秩序」の主導権の回復を企てたりしている。

 これらの「懐古主義」的な主張は、「グローバル・サウス」が長年受け続けてきた構造的な抑圧を無視し、覇権体系が引き起こした歴史的な傷痕を軽視している。

「2025年ミュンヘン安全保障報告書」の分析は、この問題をよく示している。多くのグローバル・サウス諸国にとって、過去は西側が考えるほど美しいものではなく、未来も西側が懸念するほど暗いものではない。多極化の見通しについて尋ねられた際、BRICS諸国の回答者はG7諸国の回答者よりも全体的に楽観的であった。

 単極世界や二極世界と比べ、多極化の世界は、国際社会が公正と正義、協力と共栄を追求する姿勢をより良く反映し、世界平和と発展を促進する現実的な必要性に合致し、グローバル・ガバナンス体制の改革と改善の助けとなる世界だ。

 開発途上国の国際体制における代表性と発言権のレベルアップは、「西側の欠如」を招くのではなく、世界の正和を促進するものだ。ドイツのオラフ・ショルツ(Olaf Scholz)首相が指摘するように、「新興国の国際秩序へのより広範な参加と統合の促進は、多極化の世界において多国間主義の活力を維持することになる」と考えられる。国連のアントニオ・グテーレス(Antonio Manuel de Oliveira Guterres)事務総長も、多極化は「多国間主義を修復する手段となる可能性がある」と述べている。

■世界の多極化の健全で安定した発展を進めるには、どうすべきか? 

 国際秩序の変革期において混乱や対立が生じないよう、平等で秩序ある世界多極化を推進することが肝要だ。国際社会は一致団結し、平等互恵、国際法尊重、多国間主義の実践、開放的で共栄の原則を提唱し、多極的な体系における確定的な要素と世界の変革への建設的な力を共同で固めるべきである。

 平等で秩序ある世界の多極化を推進するためには、まずルールを最優先に置くことが第一だ。国連憲章の主旨と原則は、国際関係の基本的な指針であり、多極世界を構築するための重要な基盤である。

 欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル(Josep Borrell)外交・安全保障政策上級代表は「ゲームの参加者が増える時、自然な対応方法はゲームのルールを強化することだ」と指摘している。

 またドイツのフランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)大統領は「ミュンヘン安全保障会議」で「ルールの欠如が世界再編のモデルとなるべきではない」と警告した。

 これらの声は、多極化が進む世界において「実力至上主義」の迷信に惑うべきではなく、弱肉強食の時代を再現すべきではないという共通の認識を反映するものだ。

 大国は率先して誠実さと法治を重んじ、言行不一致やダブルスタンダードを断固として排斥すべきである。権力が分散する一方で責任が共有される時、ジャングルの法則は文明の秩序に置き換えられるべきものなのだ。

 平等で秩序ある世界多極化を推進するためには、時代に合わせて協力の観念を刷新する必要がある。フランス・パリ政治学院(Sciences Po)の国際関係専門家・バートランド・バディ(Bertrand Badie)氏は、その著書『新多極化世界』の中で「多極化は単なる権力の分散ではなく、グローバル・ガバナンス・モデルの根本的な変革だ」と指摘している。

 多極化に関する一つの突出した懸念は、各自が独自行動をとり、世界の共有物資の供給不足を招くことである。このような状況を防止するには、自国の利益と共通の利益の関係を正確に把握し、正しい協力観を確立することがカギとなる。

 ブラジルのルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ(Lula Da Silva)大統領は、我々の共同生活は「地球から切り離す」ことは不可能だと指摘している。これを言い換えれば、各国が運命を共にする現在、どの国も単独で繁栄することはできず、各国が協力し、共栄を追求し、正義と平和を求めることが、自国の利益を守る唯一の道だという指摘である。

 真の多国間主義を実践し、共に協議し、共に建設し、共に利益を享受しつつ、全ての国が恩恵を受けられる包摂的な経済グローバル化を推進することでのみ、各国の課題への対応能力が絶えず強化され、発展の夢を追い求める歩みがより堅固なものとなるであろう。

 国際社会は、この歴史的な機会を捉え、歴史に対する主動性を発揮し、平等で秩序ある世界の多極化を共同で推進し、知恵で恐怖を乗り越え、対抗を協力に置き換え、ルールで混沌を解消し、歴史の車輪を光明に満ちた未来へと前進させるべきである。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News