【6月3日 CNS】5月11日の「世界肥満予防デー」を過ぎ、中国では「体重管理」が再び話題になっている。今年3月に開催された全国人民代表大会(通称「両会」)の民生テーマ記者会見で、中国国家衛生健康委員会の雷海潮(Lei Haichao)主任が約7分間にわたり体重管理について語り、今後も「体重管理年」活動を推進し、健康的な生活様式の普及を進めると表明した。2025年上半期、「減量」は中国のインターネットで最も注目されるキーワードの一つとなり、静かなる減量ブームが巻き起こっている。

 現在、中国では医療機関が提供する「健康食による減量」が大きな人気を集めている。最近では北京協和病院、同仁病院、北京大学(Peking University)第三病院などの有名病院の減量外来は予約が困難な状況だ。たとえば、協和病院の栄養科で人気のある陳偉(Chen Wei)医師による「高タンパク減量法」では、患者の毎食におけるタンパク質・主食・野菜の摂取量をグラム単位で正確に配分し、適度な運動を加えることで、健康的な減量を実現している。記者が取材した数名の患者によれば、この方法で約10キロの減量に成功したという。

「SNSで流行っている『セレブ食』と似ているけど、協和のやり方は専門の栄養科医による指導のもとだから安心できる」と語るのは、長年体重と闘ってきた唐梅(Tang Mei)さん。専門家の助言があることで安心感が得られ、「最後まで続けられる」意志力が生まれたことが成功の鍵だったという。

 食事制限以外にも、中国ならではの「中医(中国伝統医学)による減量」も注目されている。「断食も運動もせずに漢方薬を飲むだけで痩せられるなんて、ズボラな私にはぴったり!」と語るのは、3回目の中医院再診となる蘇紫(Su Zi)さん。前回の診察時よりもさらに4キロの減量に成功したそうだ。漢方薬以外にも、鍼灸や埋線(体に糸を埋める治療法)などさまざまな「技あり」減量法が中医院で提供されており、特にお腹周りの減量ニーズに対応した「腹部痩身専科」まである。

 中医学愛好者の王東(Wang Dong)さんは「中医では『病は本を治す』とされ、根本原因の解明が重要」と説明する。肥満は「胃熱型」「脾虚型」「肝気鬱結型」などに分けられ、それぞれに応じた治療で減量を図るのが基本だという。

 この「減量戦争」に参加しているのは医療機関だけではない。最近では企業も続々と減量支援を展開している。たとえば中国のEC大手・京東(JD.com)は「減量で現金ゲット」キャンペーンを開催。約20日間で2.5キロの減量に成功すれば500元(約9995円)の報酬を得られ、さらに0.5キロ減るごとに100元(約1999円)が加算される。実際に報酬を受け取った参加者も多いという。また、スポーツ用品大手デカトロン(Decathlon)も「減量チャレンジ」キャンペーンを行い、最大200元(約3998円)の運動ポイントが付与される。加えて、ヘルシーフードや代替食品、減量サプリメントなどの市場も拡大している。

 中国で「全国民的ダイエット」が進められる背景には、深刻化する肥満問題がある。「体重管理ガイドライン(2024年版)」によると、肥満問題が改善されなければ2030年には成人と子どもの肥満率がそれぞれ70.5%、31.8%に達するという予測もある。中国人民政治協商会議の委員で、華山病院の張文宏(Zhang Wenhong)医師は「体重管理は単なるダイエットにとどまらず、慢性疾患の管理とも密接に関わっている」と述べる。こうした理由から、中国政府は「減量年」の推進に本気で取り組んでいるのだ。

 いまや中国では、減量は個人的な医療行為ではなく、政府と市場が一体となって取り組む社会的行動となりつつある。(c)CNS/JCM/AFPBB News