歴史建築とカフェが融合、北京で新たな消費トレンド
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【6月2日 CNS】「首都・北京市の百年の城壁の上でコーヒーを飲みながら中央商務区(Central Business District、CBD)を眺める体験ってどんな感じ? 明城壁の『蓮カフェ』なら教えてくれるよ。『これぞ都会!』って感じ!」旅行系インフルエンサーの小羊(Xiao Yang)さんは、自身のSNSでこのように感想を述べた。現在の北京では、歴史的建築物内にオープンしたカフェが「古今の融合」によって多くの客を引きつけ、新たな消費スタイルとして人気を博している。
木製の梁、青いレンガと黒瓦、レトロな格子窓。北京東二環にある明の城壁跡に佇む「蓮カフェ」は、その古風な建築様式とユニークな立地により、多くの写真愛好家にとって「ベスト撮影スポット」となっている。戦国時代風の衣装を身にまとった程七七(Cheng Qiqi、仮名)さんは、魏晋南北朝風の写真を撮影中だった。彼女は「北京には保存状態が良く、デザインも美しい古建築が多くあります。清朝の宮廷風衣装や民国風チャイナドレスにはぴったりですが、この古びた城壁は、質素な戦国風の衣装と最も相性が良いんです」と語る。「午後は撮影に最適の時間帯です。美しい写真が撮れるだけでなく、城壁の上で夕日を眺めたり、歴史の重みを感じることができるんです」。
夕暮れ時になると、カフェの来客も増えてくる。城壁から見る夕日こそが、観光客がこのカフェに足を運ぶ最大の理由だ。城楼に登ると、西北側には「復興号」の高速鉄道が城壁の下を走り抜け、東北側には「中国尊」などCBDの高層ビル群が夕日を浴びて金色に輝いている。それらと城壁の古さが対比をなす。「ここでは現代と古代がぶつかり合い、時代の移り変わりが目の当たりにできる」と程七七は語る。
蓮カフェのオーナー・茜茜(Xi Xi)さんは、かつてのインタビューで「この場所は本当に特別。北京に現存する古城壁はここだけ。歴史が刻まれたこの地で、コーヒーやお茶を通して新しい命を吹き込みたい」と話していた。
中南海のすぐ隣にある「1901 Cafe」も、市民や観光客にとって「隠れた名所」として人気が高い。このカフェは「西什庫教会」の副棟を改装して作られ、外観は100年以上前のカトリック教会の姿を保ち、内装も静寂で荘厳な教会の雰囲気を残している。扉を開けると、目に飛び込んでくるのは「撮影禁止」の張り紙。店員によると、これはカメラのシャッター音やフラッシュによる他客への迷惑を避けるため。店内に入ると、歩くたびに古い木製階段がきしみ、タイプライターや古新聞、黒電話といったアンティークが並ぶ。静かな雰囲気の中、客は落ち着いてコーヒーを楽しみ、仕事に集中している。
このカフェの客の多くは一見客ではなく、常連客だという。インフルエンサーの楊婷(Yang Ting、仮名)さんは「このカフェの雰囲気が気に入っている。静かで落ち着けて、知り合いの顔もたまに見かける。いまでは動画編集や友人との会合など、私の仕事場兼リビングルームになっている」と語る。
「1901 Cafe」のオーナー・松子(Song Zi)さんも、「古建築には歴史が宿る。ここで店を営むこと自体に大きな意味がある」と話す。開業当初は床が緩み、屋根も雨漏りする状態だったが、松子さんが手入れを施し、塗装などを丁寧に整備したことで、今のような活気ある場所へと生まれ変わった。「建物も人の気配がなければ早く老朽化する」と彼女は語る。
上海市のモダンでスタイリッシュな雰囲気、重慶市(Chongqing)の熱気、深セン市(Shenzhen)の都市のきらびやかさとは異なり、北京市は歴史文化が基調を成す都市だ。世界的に知られる歴史都市である北京市には、国の重点文化財が百以上もあり、登録されていない著名人の旧居や遺跡も無数にある。現在では、古建築そのものに開かれたカフェだけでなく、雍和宮や白塔寺、故宮(紫禁城、Forbidden City)、地壇など名所の近くにも、文化とカフェ文化が融合した人気スポットが増えている。
たとえば、書店とカフェを融合した「模範書局」は、百年の歴史を持つゴシック教会を修復・改装したもの。「鉄手カフェ」は、民国時代の旧劇場を改造し、小さな庭付きの一軒家に入っている。「HALF COFFEE」は北京市の中心軸線上にある道教寺院「宏恩観」に入っており、道教の雰囲気の中でコーヒーを味わう体験ができる。――コーヒーが古建築を支え、古建築が都市を彩る。楊婷さんは「これらの場所は旧市街の記憶を残しながら、現代のリラックスした生活スタイルも感じられる。ぜひ歴史的建物の中でコーヒーを飲んで、北京の文化と雰囲気を味わってみて」とフォロワーに呼びかけている。(c)CNS/JCM/AFPBB News