【三里河中国経済観察】京津冀の「マイクロツーリズム」が加速
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【5月28日 CNS】「こんなに近くて、こんなに美しい。週末は河北へ」「いつでも楽しく、天津の味わい」
中国移動(チャイナモバイル、China Mobile)の「梧桐大数据」によると、今年の「労働節(メーデー)」連休では河北省(Hebei)の観光客受け入れ数が前年比で10%以上増加した。省外からの観光客は全体の3割を超え、北京市、天津市(Tianjin)、山東省(Shandong)が上位3位を占めた。特に北京市からの来訪者は全体の1割を超え、省外最大の来訪地となった。SNSでは、「1泊2日」をキーワードに、京津冀(北京市・天津市・河北省)をめぐる深掘り旅行の攻略法が多く検索されている。ある都市から出発して2〜3時間で周辺の観光地へ向かう短距離旅行は、週末の定番となっている。
文化・観光部が発表した国家級レジャー観光街区の第4次認定リストでは、北京市と河北省からそれぞれ2か所が選ばれた。北京市は東城区の王府井商業街区と石景山区の模式口歴史文化街区、河北省は石家荘市(Shijiazhuang)の湾里廟歩行街と保定市(Baoding)の西大街が選ばれている。
こうした伝統的な街並みを活用した観光促進策は明確な効果を上げている。連休中、北京市で観光客の多かったスポットの上位には王府井、南鑼鼓巷、前門大街などが並び、北京などの都市で、伝統文化とトレンドを融合させた消費体験の場が人気を博している。
2025年は京津冀協同発展が国家戦略に格上げされてから11年目にあたる。文化・観光分野も高速成長期に入り、優遇政策やインフラ整備の進展により、観光消費意欲が喚起され、「マイクロツーリズム」需要が際立っている。
京津冀エリアの文化・観光事業では、各都市を代表する場所を中心に「文化+消費」をテーマとした取り組みが進められている。たとえば、北京市の王府井商業街や、保定市の西大街(「直隷第一街」とも呼ばれる)は、都市の歴史や発展を象徴する場所として、多くの人を引きつけている。また、石景山区の模式口や石家荘市の湾里廟では、ショッピングや食事など複数の楽しみ方ができるように、複合型の観光エリアが整備されている。
こうした知名度の高い観光地は、観光客にとって「文化的な名所を訪れる」だけでなく、「その場で買い物や食事を楽しむ」といった追加の消費にもつながっている。また地元の人にとっても、東来順(北京の老舗しゃぶしゃぶ店)や槐茂醤油店といった有名ブランドがあることで、普段から足を運びやすくなり、街のにぎわいづくりに役立っている。
歴史ある都市として、京津冀エリアは観光資源を活かしたIP(知的財産権)展開に長けている。たとえば河北省の正定県(Zhengding)は、1600年以上の歴史を持つ古都であり、その文化的背景が観光消費を牽引している。1987年版ドラマ『紅楼夢(Dream of the Red Chamber)』の撮影地となった「栄国府」では、来場者が登場人物になりきって作中の場面を体験できる演出が人気だ。正定では古建築や無形文化遺産を入り口に、文化・観光・スポーツイベントも多数開催されている。
交通インフラの整備と市民向けの優遇政策により、京津冀エリアの観光体験は大きく向上している。現在、北京・天津・石家荘などの主要都市では、1〜1.5時間での相互移動が可能となり、「半日通勤圏」が現実のものとなった。また、3都市を中心とした「2時間圏」「4時間圏」の自家用車ルートも形成されている。
「気軽に出発し、ゆったりと観光する」スタイルは、交通インフラの相互接続が進んだ京津冀ならではの成果である。今年も交通一体化のさらなる推進が予定されており、天津と北京ユニバーサルスタジオ(Universal Studios Beijing)を結ぶ省境を越えた観光バス路線の開通も予定されている。
消費者支援としては、文化・観光部門が観光クーポンや入場料の割引などの施策を展開。これまでに「京津冀観光パス」は600万枚以上が発行されている。北京市の労働組合員向けには、年間100元(約1983元)で京津冀の100以上の観光スポットを自由に巡れる専用観光カードが提供されている。
文化・観光部の孫業礼(Sun Yeli)部長は、「インフラ建設を強化し、文化・観光産業の弱点を早急に補う必要がある」と語っている。観光産業の本質は体験であり、「同じ都市圏」としての一体感が高まる中、京津冀エリアでは三地の住民が「互いに訪問し合う」ことが日常の選択肢になりつつある。
制度の整備とインフラの充実により、京津冀エリアの「マイクロツーリズム」は急速に成長している。中国観光研究院の統計調査部長・何瓊峰(He Qiongfeng)氏は「2024年週末レジャー旅行指数レポート」を解説し、「週末旅行の目的は、家族とのふれあいやストレス解消など、癒やし系のニーズが中心だ」と述べた。
何氏によれば、京津冀の週末レジャー旅行需要は全国でも上位にあり、三地域間の旅行者循環(内需)が55.32%を超えているという。
「ライトなアウトドア」志向のもと、時間をかけずに多様な風景を楽しみたいというニーズが短距離旅行の前提条件となっている。北京の万里の長城(Great Wall of China)や故宮(紫禁城、Forbidden City)に代表される古都の風情、天津の洋館文化、河北で体験できる北方人の「海へのあこがれ」――こうした京津冀の補完的観光資源が、「山あり、水あり、都市あり」という旅行者の多様な期待に応えている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News