【5月29日 Peopleʼs Daily】大興安嶺(Greater Khingan Mountains)の北麓、黒竜江の南岸、中国の最北端に位置する黒竜江省(Heilongjiang)漠河市(Mohe)では、最低気温が摂氏マイナス53度まで下がり、氷結期はほぼ半年におよぶ。

 この極寒環境という特色ある資源を活かすため、同市は「寒地テスト産業」を積極的に推進し、「冷たい資源」を「熱く盛り上がる産業」へと転換している。 現在、同市には6社の寒冷地テスト企業が存在し、年間テスト車両数は1200台を超え、新素材、電子部品、車用フィルムなど2万3000点におよぶ品目のテストを行っている。

 加速、旋回、ドリフトなど、「黒竜江紅河谷汽車測試」の北極村(Beijicun)基地では、新エネルギー車が氷雪の円周コースを疾走し、車体の後尾から雪の霧を巻き上げていた。

 コースの傍らでは、自動車メーカーのテストエンジニア・曹書文(Cao Shuwen)さんが、テストドライバーと共に問題点を確認していた。彼はチームを率いて初冬の頃からここで13種類の車種、140台の車両の極寒環境下における様々な性能のテストを行っているのだ。「極寒テストは新車発売前の重要なテスト項目だ」、曹さんはこう強調する。近年、新エネルギー車の開発が急速に進み、バッテリー航続距離、充電速度、モーター・バッテリー制御システムの低温特性評価など、極寒環境下での実地テストが不可欠となっている。

 漠河市は毎年5か月以上、寒冷地テストを実施できる環境が確保され、自動車メーカーから高い評価を受けている。「ここには優れた試験道路と施設が整っているだけでなく、自動車メーカーのニーズにも非常に配慮している。毎年のコース建設、更新、維持管理では、各メーカーの個性的な要望や意見を事前に収集している」、武漢出身の曹さんは、2022年から漠河で寒冷地テストを始め、ここで提供されるサービスに非常に満足している。

「一業興隆百業栄」(一つの産業が興隆すれば百の産業が栄える)、漠河は昨冬の氷雪期間に、寒冷地試験走行を行う39社の自動車メーカーから1500人以上の試験関係者を集め、これでオイル、飲食、宿泊、交通、ショッピングなど3600万元(約7億1136万円)を超える間接収入を得た。

 漠河市の北極村景観区にある李(Li)さんの東北料理店は、各地の訛りで話す自動車メーカーのエンジニアでいつも満員だ。「大通りを歩けば、どんなブランドでも見られるよ!漠河の冬は寒いけれど、うちの商売は熱々だよ!」、李さんはこう言って笑った。

 太陽光発電モジュールの使用周期は長く、低温、昼夜温度差、積雪荷重、強風など多岐にわたる過酷な条件に耐えなければならない。

 極寒環境が太陽光発電に与える影響を研究・検証するため、「中国国検測試集団」は漠河に「極寒測定試験園」を建設した。この園は、国内初の太陽光発電分野の極寒気候下での総合試験センターで、事務所、検査、研究開発、倉庫機能を備えた屋外実証テストパークだ。24年12月現在、このテストパークに入居する企業は60社を超え、検査サンプルの型式は80種類以上に達している。

 国検測試集団漠河支社の唐寧(Tang Ning)行政主管の説明によると、この試験施設では、発電量データや個々の太陽光パネルの電圧、電流、出力(電力)などの基本データを、ソフトウェアで遠隔監視できるという。

 ある太陽光発電モジュール企業は「環境設営装置で模擬的に低温環境をつくり出すのに比べ、実際の環境下では雪の荷重、強風、昼夜の温度差など様々な要因が重なり、モジュールの運転中に発生し得る劣化、老化、様々なパーツの故障など、より現実的な問題が露呈する状況を実地検証することができる」として、テストパーク建設当初からさっそく自社製品を持ち込み、1年間の極寒気候下での屋外実証試験を開始していた。

 同社は「ノルウェーやアイスランドなど、高緯度極寒地域市場への進出を計画しており、製品の実証試験は不可欠だ。漠河の気候条件は、貴重な試験環境を低コストで提供してくれる」と、このテストパークを高く評価している。

 漠河の雪の早朝、まだ太陽がわずかに顔をのぞかせたばかりの頃、ハルビン工業大学「空調熱ポンプ寒冷地性能テスト」プロジェクトチームの現場メンテナンス担当者・李小輝(Li Xiaohui)さんは、すでにテスト現場へ向かう途中だった。

 空調業界では「冷房は基本技術、暖房は実力の証」とよく言われるという。
李さんは「低温環境下での熱制御能力は、エアコンの総合性能にとって大きな試金石だ。プロジェクトチームの目的は、漠河の極寒環境下でエアコン部品の耐寒性、全体の持続運転能力、エネルギー消費状況を検証し、今後の製品改良と開発に活かすことだ」と説明した。

 このプロジェクトの責任者・ハルビン工業大学の呉健(Wu Jian)教授は「現在、エアコンのヒートポンプの寒冷地テストには業界の公式標準がない。我々はヒートポンプ研究が比較的進んでいる国内の大学と協力し、国内基準と国際基準の制定を推進する必要がある」と述べた。また呉教授は今後の目標として、凍雨(とうう)や豪雪などの異常な運転条件をテストに組み込み、これらの要因に対抗する方法を研究し、中国のクリーン暖房事業の発展を支援する計画だと話している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews