【5月21日 CNS】初夏を迎え、温暖で快適な気候の中、中国の観光市場は引き続き活況を呈している。今年5月の第1週の連休期間中、中国国内の博物館は延べ6049万人以上の来館者を記録し、過去最多となった。昨年、中国各地で巻き起こった「博物館ブーム」により、多くの国家級・省級博物館はチケットが取りにくい状態となったが、今年は歴史的建築に併設された「小さくて美しい」博物館にも注目が集まっている。

 北京市にある「小さくて美しい」博物館の中でも、「史家胡同博物館」は特に知名度と来館者数が高い。博物館は「一つの胡同で中国の半分を知る」と称される史家胡同に位置し、民国期の三大才女の一人、凌叔華(Ling Shuhua)の旧宅の庭園を活用したものだ。敷地面積は約1000平方メートルで、伝統的な四合院様式の二進構えとなっている。館内では、凌叔華一家の物語だけでなく、軍人・政治家の傅作義(Fu Zuoyi)や政治家・学者の章士釗(Zhang Shizhao)、劇作家の曹禺(Cao Yu)など多くの著名人が住んだことのあるこの胡同の歴史についても詳しく紹介している。

 北京市で初めて設立された胡同に特化した博物館として、史家胡同博物館は、豊富な文献資料と実物を通じて胡同文化を紹介している。解説員の芙蓉(Fu Rong、仮名)さんによれば、来館者は中国全国はもとより、世界各国からも訪れているという。

 記者が取材した日は、70歳近い観光客グループが訪れており、天気の良い日を選んで博物館で集まり、旧交を温めていた。主催者の張芸(Zhang Yun、仮名)さんは、今回の集まりのために史家胡同と博物館を2回訪れ、館内で古地図を撮影したうえで、現地調査やネットの情報も活用して、この胡同の建築と歴史を詳細に調べ上げたと語った。「私たちは皆、北京に長年住んでいて胡同文化には慣れ親しんでいるが、この胡同は格別で、多くの著名人が関わっており、一見の価値がある」と語る。

 史家胡同博物館がその「地の利」で注目を集めているとすれば、別の博物館は「人の和」で人気を博している。

 北京の景山のすぐ隣、故宮博物院(The Palace Museum)からわずか700メートルの場所に、約500年の歴史をもつ慶雲寺がある。過去には家廟(祖先を祀る寺)として、さらには民家としても使われていた。北京の古建築を撮影するのが趣味の李萌(Li Meng)さんによれば、彼女が2017年に初めてこの寺を訪れたときには、違法建築が散在し、電線や排水管、物干し用の鉄線などが無秩序に張り巡らされていたという。幸い、その後この寺は文物退去リストに含まれ、住民が移転し、政府主導・企業運営・社会参加の手法で、現在の「北京金石博物館」として生まれ変わった。

「金石(きんせき)」とは、金属や石に文字や模様を刻む文化を指す。この博物館は、300平方メートルあまりの二進構えの院落に設けられ、篆刻(てんこく)文化を中心に、国印や国碑を切り口として、新中国の歩みを記録する篆刻芸術の物語を伝えている。

 しかし、この金石博物館が注目を浴びている理由は、古い寺院建築や収蔵品だけではない。館内で体験できる「金石伝拓」という非物質文化遺産体験が人気を集めているのだ。これは中国古来の「複写技術」で、字や絵が彫られた石碑や金属の表面に宣紙を当て、水で濡らしてしっかり密着させ、墨でたたいて写し取るという技術である。職員の梁冰(Liang Bing、仮名)さんによれば、この体験は特に人気があり、学生グループの研修や外国人観光客も多く訪れるという。

 文明が数千年にわたって続く中国には、全国各地に数多くの歴史的建築物が存在する。こうした「時の利」「地の利」「人の和」を活かし、歴史的建築を「小さくて美しい」博物館として再生させる取り組みは各地で続々と行われている。これらの博物館が一斉に注目を集める背景には、中国政府がここ数年推進している中小博物館の整備方針がある。2021年、中国政府は中小博物館の質の向上を掲げ、文物遺跡や歴史的建築を活用した博物館の設立を奨励。その後、各地で急速に「古建築を活用した小さな博物館」が整備され、歴史的建築の文化的価値を活かしたり、文化的体験の場を提供したりしながら、現代社会において新たな命を吹き込んでいる。(c)CNS/JCM/AFPBB News