【5月12日 CNS】中国とベトナム(中越)が再び大規模な合意に達した。

 4月14日、中越双方は合計45件の二国間協力文書を締結・公開した。これらは、インフラ連結、人工知能(AI)、税関・検疫、農産品貿易、文化・スポーツ、民生、人材開発、メディアなどの分野を幅広くカバーしている。

 今回の45件の合意の価値は、単なる文書上の数字にとどまらず、世界経済の回復が鈍化する中で、中越間の産業・サプライチェーン協力がより緊密になったという深い意味を持っている。
 
 インフラプロジェクトの戦略的連携から、デジタル技術の高度な互換性、物資やサービスの自由な流通、さらには制度レベルでの開放的な協働に至るまで、両国はサプライチェーンの強靭性構築や相互接続の分野において、地域発展の絆をより強固なものにしている。
 経済・貿易の分野では、中国は20年以上連続してベトナムの最大貿易相手国の地位を維持しており、ベトナムは中国にとって東南アジア諸国連合(ASEAN)内で最大、世界全体でも第4位の貿易相手国となっている。2024年には、中越間の双方向貿易額が2600億ドルを突破した。中国によるベトナム投資プロジェクトは955件に達し、114の対ベトナム投資国・地域の中で第1位となっている。累計投資額は310億ドル(約4兆4550億円)を超えている。

 中越の実務的な協力は、具体的な民生の利益にもつながっている。

 農産物貿易を例に挙げると、ベトナム産のドリアンやドラゴンフルーツなどの対中輸出額は大幅に増加している。2024年、中国はドリアンを合計156万トン輸入し、そのうちベトナムからの輸入は73.8万トンで、全体の47パーセントを占めた。中国の消費者にとっては、北京市で注文すれば3日後にはベトナム産のドリアンが届くという利便性を実感できる。

 ベトナム税関総局のデータによると、2024年の1月から11月まで、ベトナムから中国への果物・野菜、水産物の輸出額はそれぞれ41億ドル(約5892億1100万円)、14億ドル(約2011億9400万円)で、前年同期比で28.7パーセントと23.2パーセントの増加を記録した。

 実際、東南アジアの他国と比べて、ベトナムは陸路輸送という利点を持ち、ドリアンなどの果物を直接中国へ輸送できるため、海上輸送と比べて時間的コストを大幅に削減できる。この「陸の回廊」の効率性は、中越国境の通関地点である友誼関口岸で顕著に表れており、通関後わずか6時間で中国の商品がハノイに到達することができる。

 ベトナムの農家は、中国という巨大な市場の支えを得ることで生産効率と収入を向上させており、中国の消費者は多様で質の高い農産品を手に入れられるという、まさにウィンウィンの協力モデルとなっている。

 一方で、米国が関税を振りかざし、すべての貿易相手国に対していわゆる「対等な関税」を課すと宣言している今、中越の実務協力は、嵐の中で小舟が単独では耐えられず、共に舟をこぎ合ってこそ安定した航路を進めるというメッセージを、外の世界に向けて示すものでもある。

 2024年12月、広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)の欽州港とベトナムのハイフォン港を結ぶ越境「直通船」が初航行を果たした。ガラス製品、鉄鋼製品、自動車部品などを満載した船は、欽州港を出発して約8時間でハイフォン港に到着する。

 両国の港を直接結ぶこの航路は、貨物輸送時間を短縮するだけでなく、相互接続やサプライチェーン管理などの面においても中越の連携をさらに強化することとなった。

 こうした結びつきの強化は、地方経済の発展も後押ししている。たとえば、中国で唯一ベトナムと陸海の両面で接する広西では、2024年の対ベトナム進出・輸出入総額が2955.76億元(約5兆8646億円)に達し、前年同期比で16.4パーセントの増加となった。ベトナムは26年連続で広西にとって最大の貿易相手国となっている。

 過去には、地域包括的経済連携協定(RCEP)の枠組みの下、ベトナムは中国産の生鮮魚、天然ハチミツ、ジャガイモ、コーヒーなど91.3パーセントの農産品に対する関税を最終的に撤廃すると約束している。それに対し、中国側もベトナム産の魚介類、果物とナッツ類、飲料、調味料など92.6パーセントの農産品について、最終的にゼロ関税とすることを約束している。

 グローバル化の潮流が逆風を受けている現在において、中越の互恵協力は、両国の農産品にゼロ関税の「ゴールデンルート」を切り開くだけでなく、コスト削減と市場拡大という相乗効果によって、地域の経済連携において貿易保護主義に対抗する実践的なモデルを示している。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News