■社会のあらゆる部門を安全保障と関連

ヘルシンキ中心部にあるメリハカ地区の地下シェルターは、6000人収容可能で、子ども用の遊び場や複数の球技場、ジムが併設されている。

「市民が平時も利用しているため、シェルターの維持管理も非常に行き届いている」とハイリネン氏は述べた。

フィンランドは2023年に北大西洋条約機構(NATO)に加盟した。以降、社会のあらゆる部門を安全保障と関連付ける「文化的な思考様式」が、この国の一種の「売り」にもなったと指摘するのは、フィンランド国際問題研究所の上級研究員マッティ・ペス氏だ。

「こうした民間防衛シェルターは、有事の民間人保護に関する政府の準備体制を示す上での一つの具体例となっている」と話した。

最近では、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領やデンマーク国王のフレデリック10世とメアリー王妃らも、メリハカ地区の地下シェルターを視察している。

■ソ連に侵攻された「苦い教訓」

ハイリネン氏は、「防衛シェルター建設に関する最初の法律が採択されたのは1939年の『冬戦争』が始まる2週間前だった」と説明し、当時のソ連によるフィンランド侵攻に言及した。侵攻は100日以上続いた。

「当時、民間人を守る備えが十分でなかったことが、国にとって苦い教訓となった」とハイリネン氏は続けた。

現在のフィンランドは、ほぼすべての市民を保護できるシェルターが用意されている。ヘルシンキには90万人分の避難スペースが確保されており、市民全員とさらに数千人が収容可能だ。

主に人口密集地域に設置されている、国内最大規模の複数の公営シェルターは、爆発、建物の倒壊、放射線、有毒物質にも耐えられるように設計されている。

また、床面積が1200平方メートルを超える建物や集合住宅は、法律でシェルターの設置が義務付けられている。

フィンランドでは、男性は18歳になると約半年から1年の兵役義務を負い、女性は志願して兵役に就くことができる。有事には直ちに約28万人を動員でき、予備役の総数は約90万人に上る。

フィンランド政府は4月1日、ロシアによる安全保障上の脅威に対処するため、2029年までに国防費を少なくとも国内総生産(GDP)の3%に引き上げる計画を発表した。

映像は3月に撮影。(c)AFP