【5月2日 AFP】中国・河北省のほこりっぽい倉庫の中で、劉瑋さん(42)は晴れやかな結婚写真の数々を工業用シュレッダーに押し込んだ。破局したカップルの思い出は、発電用の燃料となる。

中国では、結婚写真の撮影は一大産業だ。公園や寺院、史跡などに行けば、ポーズをとる新婚夫婦がそこかしこにいる。

だが、劉さんの会社が提供しているのは真逆のサービスだ。離婚したカップルの思い出の写真を裁断し、燃料としてリサイクルする。中国のどこを探しても「個人の持ち物を破壊するサービスというビジネスはなかった」とAFPに語った。

中国では生きている人の写真や画像を傷付けることは文化的にタブーとされているが、劉さんの元には1日平均5~10件ほどの注文が全国から舞い込む。

中にはプラスチックやアクリル、ガラスが使われた大型の壁掛けパネルや凝った装飾のアルバムもある。

従業員は、顧客のプライバシーを保護するために顔の部分をスプレーで塗りつぶす。シュレッダーにかけられないガラス製のパネルはハンマーで打ち砕く。

写真には、白いウエディングドレスを着た女性や見つめ合うカップル、揃いのユニフォームを着てサッカーボールを持ったカップル、妊娠中の妻のお腹に頬を寄せる夫などが写っている。

劉さんのサービスは2023年にスタートした。依頼主の大半は45歳以下で、3分の2は女性だという。

劉さんは、結婚写真を処分する動機は複雑なことが多いと話した。相手への恨みからそうする人は少なく、「皆、区切りを望んでいる。心の中で結婚に、けりをつけようとしている」という。

人生の区切りをつけるための儀式として、破壊作業に立ち会う人もいる。

再婚する際や、配偶者の死を受け入れることができたときに、何年も保管してきた写真を処分するケースもある。

劉さんは、顔が塗りつぶされた写真を動画に撮り、依頼主に最終確認を取る。それが終わると、従業員が丁寧に写真をシュレッダーにかける様子を撮影する。

裁断された写真は近くのバイオ燃料工場に運ばれ、家庭ごみなどと共に発電に利用される。

中国社会は保守的だが、2003年に法律が緩和されたことをきっかけに離婚が急増。だが、2021年に離婚の申請から成立まで1か月の「冷却期間」を置く制度が導入されて以降、今度は劇的に減少した。

2020年の離婚件数は430万件を超えていたが、 2022年は290万件だった。

映像は2024年に撮影。(c)AFP/Matthew WALSH