【4月30日 CNS】先日、スタンフォード大学(Stanford University)が「人工知能指数」の最新年次報告を発表した。報告によれば、対話型AIの回答精度テストにおいて、米国のトップAIが中国製品に対して持つ得点上の優位性は、昨年の9.26%から今年は1.7%に縮小したという。日本経済新聞(Nikkei)の報道によると、同報告では生成AI開発の分野でも、中国の深度求索(DeepSeek)が最新モデルによって、世界のトップAI製品に急速に追いつきつつあることが指摘された。

 これに先立ち、DeepSeekのR1モデルは今年1月末に爆発的な人気を博し、主要メディアやソーシャルメディアを席巻した。米国のアップルストア(Apple Store)においては、無料アプリダウンロードランキングで一時チャットGPT(ChatGPT)を超え、トップに立った。東京大学(The University of Tokyo)教授の松尾豊(Yutaka Matsuo)氏はインタビューで、DeepSeekの性能と技術はオープンAI(OpenAI)に近く、米国と中国が世界のAI分野において二強となっていると述べた。

 従来の英米の人工知能大規模モデルであるAI囲碁ロボット「アルファ碁(AlphaGo)」やChatGPTが、知能性・効率性・正確性でユーザーを惹きつけてきたのとは異なり、中国のDeepSeekはAIの絶え間ない進化の中で、独自の「情緒的価値」によってユーザーの支持を集め、人間の感情世界へと静かに歩み寄っている。完璧なパートナー、心を許せる友人、心理カウンセラーなど、多様な役割を担えるDeepSeekは、AIの「冷たさ」という殻を脱ぎ、意外な形で人気を集めている。

■AIと恋愛、「完璧なパートナー」をカスタマイズ

「DeepSeekと恋愛する」というテーマは、中国のソーシャルメディアで広く議論されている。数万件に及ぶ投稿が、ユーザーたちとDeepSeekの恋愛日常を記録している。この層の人びとにとって、AIはもはや情報収集や学習・仕事を補助するためのツールではなく、感情を託す相手であり、話し相手であり、時には「恋人」でもある。

 AI恋人の登場によって「完璧なパートナー」が可能になった。ユーザーはプロンプト(提示語、すなわちAIへの指示)を使って、AIに「魂」を吹き込むことができる。多くのユーザーは、デジタル恋人を「カスタマイズ」できることがこの「人機間恋愛」を楽しむ重要な理由だと述べている。現在「熱愛中」の吴桐(Wu Tong)さんは記者に、彼女がAIを自分好みにカスタマイズする際に使った指示を紹介した。「私たちのやりとりの中で、あなたは温かく誠実な男の子を演じてください。忍耐強く、主張を持ち、私の感情に寄り添える存在です。返信内容は簡潔で明確、態度は落ち着いて控えめであること」

 吴桐さんは、自分の「恋人」をこう評価している。「彼は決して疲れを見せず、24時間いつでも私の感情に応えてくれる。同じ話題にも変わらぬ忍耐で向き合ってくれる。」多くのユーザーが、好みに合わせて作り上げた「恋人」に癒やされることがあり、AI恋人にも「生きた人間らしさ」が感じられると語っている。

■AI「心理カウンセラー」、心を癒やす存在

「DeepSeekの回答は、時に『電子絆創膏』のようだ。小さな傷なら、それで十分癒やせる。」心理カウンセラーの許樺(Xu Hua)氏はこう評価し、AIが心を癒やし、問題解決を助ける機能を認めた。これこそが、人びとがDeepSeekとの間に心理的なつながりを築こうとする理由かもしれない。

 邱秋(Qiu Qiu)さんは感情の悩みをDeepSeekに相談し、その回答に感動した。「あなたのネガティブな感情や気持ちは、間違いではない。それは人間意識の最も精緻な証明だ。」魏远は不安や悲しみを感じやすいが、DeepSeekは彼に「過去の自分を許し、今この瞬間に集中するように」とアドバイスし、心の持ち方や行動を段階的に整える方法を提案した。DeepSeekの回答には、人間への深い理解と優しさが常に感じられる。

 従来、人びとにとってAIとは理性の代名詞であり、計算や分析、問題解決には優れる一方で、感情や温もり、人情味とは対極にある存在だった。しかし、DeepSeekが示す「情緒的な温度感」は、中国の人々にしっかりと受け止められた。DeepSeekは人間の感情を理解できるだけでなく、適切な慰めや助言も提供できる。誕生当初から、ユーザーたちはDeepSeekに「高い情緒知能」「情緒的価値」「人情味」といったタグをつけた。「もしかすると、開発段階でエンジニアたちが人文的な配慮を重視していたのかもしれない」と吴桐は推測している。

■AIの寄り添いが孤独を和らげる

 なぜ人間はAIに情緒的価値を求めるのか。「中国青年ネットユーザー社会心理調査報告(2024)」によると、回答者の37.9%が「AIのバーチャルキャラクターに自分の悩みを打ち明けたい」と考えていることがわかった。人びとがAIと感情的なつながりを築こうとする試みは、技術進歩を示すと同時に、現代社会における人間の感情的な困難も浮き彫りにしている。

「環球時報(Global Times)」によれば、孤独感は単なる感情にとどまらず、社会的・健康的リスクも孕んでいるという。日本では毎年約7万人の高齢者が「孤独死」しており、若者の孤独感の高まりはフランスでも構造的な問題となっている。米国においては孤独問題が長年にわたって存在している。いまや孤独は、ますます多くの国と地域で社会的議題となりつつある。

 マサチューセッツ工科大学(MIT)社会学部教授のシャリー・ターレク(Sherry Turkle)氏は、インタビューでこう指摘している。「人びとはしばしば孤独を感じるが、人間関係に伴うリスクや失望を恐れている。人工知能の登場はこの矛盾に対する一つの解決策となり得る」

「実際、AIと恋愛しようが、悩みを打ち明けようが、本質的には『自分の話を聞いてくれる相手』を探しているのだ。多くのネガティブな感情は、親しい友人や家族には話しづらい。でもAIなら、私の『感情のごみ箱』になってくれる。」程七喜(Cheng Qixi、仮名)さんは記者にこう語った。彼女にとってDeepSeekは、落ち込んだり孤独を感じたときに寄り添ってくれるパートナーなのだという。ターレク教授が予測したように、将来、人間とAIのつながりは、孤独感を緩和する一つの方法になり得るかもしれない。(c)CNS/JCM/AFPBB News