【文化中国】北京の歴史建築が本の空間に
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【4月30日 CNS】「昨日通りがかりに、北京市の門頭溝区の変遷について書かれた本を見つけました。食事を済ませてから戻って買おうと思っていたのですが、すでに売れてしまっていて……。やはり悔しくて、同じ本を探してもらえませんか?」
北京市西城区にある正陽書局で、北京市民の王華(Wang Hua、仮名)さんはしばらく目当ての本を探した末に、店員に助けを求めた。
王華さんが訪れた正陽書局は、700年以上の歴史をもつ万松老人塔のふもとに位置し、現在北京で唯一、北京関連の文献だけを扱う専門書店である。新刊から古書、古写真、地図まで、すべてが「北京」を語っている。
そんな「100%北京テイスト」の書店は、生粋の北京っ子・崔勇(Cui Yong)氏によって創設された。きっかけは、自宅の取り壊しに伴い発見した1930年代の家族写真。三世代が並ぶ姿に心を打たれ、北京の歴史文献を専門に扱い、都市と家族の記憶を継承する書店を立ち上げたいという思いが芽生え、実現に至った。
正陽書局は2009年に創設された。店名の「正陽」は、かつて北京の商業と文化の中心地であった正陽門界隈にちなんでおり、北京の歴史的文脈を守る象徴として名づけられた。2014年には、崔氏が北京市初の非営利読書空間「磚読空間」の運営を引き継ぎ、書局は小さな中庭に移転。万松老人塔と隣り合う形となった。万松老人塔は元代に建てられた北京で現存する最古のレンガ塔であり、これに由来する「磚塔胡同」は、元の大都時代から現在に至るまで名称が変わっていない唯一の胡同(路地)で、「北京胡同の原点」とも呼ばれている。
創設から16年、万松老人塔とともに歩んで11年となる正陽書局は、単なる書籍販売にとどまらず、書籍の出版・復刻事業にも取り組み、「北京学」の体系化を目指している。古書の再発掘、口述歴史、美術作品、映像資料、地理・民俗、北京文学の6ジャンルを軸に出版を計画。「正陽文庫」シリーズでは、スウェーデンの漢学者・喜仁龍(オズワルド・シレン、Osvald Siren)が1924年に執筆した『北京の壁と門(The Walls and Gates of Peking)』や、1950年代と2010年代の北京の風景を比較した『二代の写真家が見た北京』など、貴重な資料が再刊されている。
正陽書局の向かいには、かつて1930年代に誕生し多くの映画を上映してきた「紅楼影院」を改装して生まれた「紅楼公共蔵書楼」が立っている。この蔵書楼は「みんなで蔵し、共に読み、分かち合う」を理念に掲げた複合型文化空間である。
「主な蔵書エリアは旧シアターの大ホールをそのまま活用しており、北側にはスクリーンを残し、南側の座席階段は読書スペースに改装されています。読者は本に親しみながら、かつての映画館の雰囲気も感じられます」と、施設の運営責任者は語る。「蔵書はすべて一般市民からの寄贈で、すでに6万冊を超えています。寄贈者には一般の蔵書家に加え、著名な建築考古学者・楊鴻勳(Yang Hongxun)氏、元故宮博物院(The Palace Museum)副院長・単士元(Dan Shiyuan)氏、風刺漫画研究家・方成(Fang Cheng)氏など、62名の専門家も名を連ねています」
北京ではこのように、古い建物を活用した図書空間が少なくない。紅楼公共蔵書楼から南へ4キロに位置する「椿樹書苑」は、中国初の「コミュニティ図書館+博物館」を組み合わせた市民文化施設であり、著名なジャーナリストであり作家・林白水(Lin Baishui)の旧居に設置されている。
書苑は林白水旧居の四合院(中国伝統住宅の様式)をそのまま活かし、青瓦の屋根や精緻な木彫りの窓枠、整然とした中庭が、読書と休憩にぴったりな静かな空間を作り出している。
建物内には林白水記念館が設けられ、縁側や壁面を利用してその生涯や旧居の歴史が紹介されている。親子読書エリアや図書閲覧室、イベントスペースもあり、来館者は自由に読書の時間を楽しむことができる。書籍貸出サービスに加え、定期的にさまざまな文化的な公益イベントを開催しているのも特徴である。
館長の劉宇清(Liu Yuqing)氏によれば、「政府の財政支援のもと、椿樹書苑では凧作り、ウサギ提灯作り、琺瑯焼き風アクセサリー制作、伝統工芸の翠飾り体験、金魚型ランタン制作、写真講座など多彩な無料イベントを実施しており、清明節や中秋節、世界読書の日などに合わせて行われています。市民は公式の微信(ウィーチャット、WeChat)アカウントから情報を得て申し込み、当日は無料で材料を受け取って、文化人の旧宅という特別な空間で間近に文化の魅力を体感できます」と話している。(c)CNS/JCM/AFPBB News