【5月3日 Peopleʼs Daily】映画の特殊効果、3Dモデルや動画データを最終的なビジュアル表現(画像や動画)に変換するレンダリング、そして今や日常生活でも広く使用されている生成型人工知能、顔認証、即時翻訳など、全てはAIコンピューティング能力のサポートに依存している。現在、大規模言語モデルと生成AIは、コンピューティング能力の需要を絶えず上昇させている。

「国際データコーポレーション(IDC)」と「浪潮電子消息産業(Inspur Information Technology)」は最近、共同で「2025年中国人工知能コンピューティング能力発展評価報告」を発表した。

 報告によると、中国のAIコンピューティング能力の成長率は予想を上回るものになっている。昨年、中国のAIコンピューティング能力は725.3エクサフロップス(EFLOPS)に達し、前年比74.1%増、市場規模は190億米ドル(約2兆7617億円)に達し、前年比86.9%増加の見込みだという。

 山東省(Shandong)済南市(jinan)の大型インテリジェントコンピューティングセンターの建設現場で、幾つものコンテナブロックがクレーンで次々にゆっくり持ち上げられ、所定の位置まで運ばれて、そこに固定されている。このセンターは「積み木」のような工法で素早く組み上げられ、センターが完成する。119のプレハブコンテナブロックで構成される浪潮信息(Inspur)社のAI中枢「元脳」のコンピューティングセンターは、着工から正式稼働までわずか120日しかかからなかった。

 デジタル経済の発展の重要な基盤として、コンピューティング能力は、主にスーパーコンピューティング、汎用コンピューティング、AIコンピューティングなどに分類される。

 そのうち、AIコンピューティング能力はAIアプリケーション向けに設計され、AIアルゴリズムモデルのトレーニングと運用をサポートするためのものだ。現在、AIコンピューティング能力に対する需要はあらゆる分野で高まっている。

 120日間で建設された「コンピューティングセンター」は、中国におけるAIコンピューティング能力の急速な成長を象徴するものだ。IDC中国支社の周震剛(Zhou Zhengang)副総裁の話によれば、2024年の中国のAIコンピューティング能力の成長率は、同期間の汎用コンピューティング能力の成長率の3倍以上となっている。

 近年、国家レベルから地方レベル、さらには様々な事業体に至るまで、あらゆるレベルでコンピューティング能力の資源配置が進んでいる。周副総裁は「今後2年間、中国のAIコンピューティング能力の規模は引き続き急成長し、25年24年比43%増加し、26年には24年の2倍の規模に達する見込みだ」と話す。

 現在、AIコンピューティング産業はその応用のペースを加速しており、多くの企業が積極的に大規模言語モデルを「受け入れ」ている。IDCが実施した調査によると、42%の企業が大規模言語モデルの初期テストと重点概念検証を始めており、17%の企業が技術導入し、生産段階で実際の業務に使用している。

 製造業における応用シーンは複雑でジャンルも多種多様、膨大な量の断片化されたデータが存在するため、製造業での大規模言語モデルの導入は困難でコストの問題もあると言われてきた。

 しかし、スマート製造の技術開発企業「思謀科技(SmartMore)」の創始者・賈佳亜董事長は「例えば品質検査の分野では、全ての欠陥のサンプルを入手することは非常に困難だ。以前は、様々な種類の欠陥を集めるのに、工場の生産ラインを最低2~3か月は稼働させる必要があった。それが今では、わが社がリリースした産業用マルチモーダル大規模言語モデルのディープラーニング機能を利用して、通常で1週間あるいはそれ以下で済むようになった」と説明している。この大規模言語モデルはすでに数百種類の欠陥を生成し、家電や新エネルギーなどの分野で広く利用されているという。

 企業が自社のAIコンピューティングのインフラ施設を設置するだけでなく、多くの企業がクラウドコンピューティングサービスと契約することで、インテリジェント化転換を実現している。報道によると、中国の通信機器大手「華為技術(ファーウェイ)」傘下のクラウドコンピューティングサービス「盤古AIビッグモデル」は、製造業、医薬研究開発、石炭採掘、鉄鋼などを網羅する30以上の業界、400以上の応用シーンで利用されている。

 貴州省(Guizhou)貴安新区(Guian New Area)のスーパーコンピューティングセンターでは整然と並ぶサーバーキャビネットが高速で稼働している。ここでは1秒間に3京回(3×10の16乗回、0.03エクサフロップス)の演算が可能であり、北京、上海、広州(Guangzhou)など38都市と直接ネットワーク接続を実現している。

 現在、様々な業界や応用シーンでの多様なニーズにより、コンピューティング能力の開発には新たな要件が求められている。「浪潮電子消息産業」の劉軍高級副総裁は「金融業界では、高いセキュリティと遅延が少ないコンピューティング環境が求められ、医療業界では大量の医療用画像データの処理が必要とされ、製造業界ではリアルタイムでの生産最適化が求められ、インターネット業界では大規模なユーザーデータとコンテンツの推奨処理が必要とされている」と事例を挙げて説明する。

 これら多様なニーズのため、コンピューティング能力の基盤構造には、高性能、低遅延、高安全性、拡張性、コスト効率性など多くの要件が求められている。 業界専門家は、将来を見据え、中国の計算能力産業の発展の鍵は、一定のコンピューティング能力の蓄積の後、コンピューティング能力の規模的な拡大から、高品質で価値の高いコンピューティング能力の発揮への転換が必要となると指摘している。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews