【三里河中国経済観察】中央企業が一斉に株式買い増し、信頼と長期価値を示す
このニュースをシェア

【4月29日 CNS】資本市場の安定化に向けて、「国家チーム」が動き出した。
4月8日、中国人民銀行(People's Bank of China、中央銀行)と中央匯金公司が相次いで重要な発表を行った。中央匯金公司は、自らが資本市場における「国家隊(国家チーム)」であり、「平準基金」に類似する役割を果たしていることを明確にした。中央銀行は、必要に応じて中央匯金公司に十分な再貸出支援を提供すると表明した。
注目すべきは、今回の市場安定策において「国家隊」が迅速に動いただけでなく、その中心的な役割を果たしたのが中央企業(央企)であったことだ。
4月7日以降、中国誠通控股集団(China Chengtong)、中国国新控股(China Reform Holdings)、中国電子科技集団(CETC)、中国石油天然気集団(China National Petroleum Corporation)、中国石油化工(シノペック、SINOPEC)などの複数の中央企業が、相次いで株式資産の大規模な買い増しを発表し、資本市場に大きな注目を集めた。
国務院国有資産監督管理委員会(国資委)は4月8日、中央企業およびその上場子会社が自発的に行動を起こし、株式買い増しや自己株買いの強化を全面的に支援すると発表した。
中央企業の一斉行動は、国有資本が市場を支えるという強いメッセージを発信するとともに、米国による追加関税への対応として、国家の戦略的資本が持つ底力と自信を明確に示すものでもある。
具体的には、各中央企業が得意とする手法を用い、上場投資信託(ETF)の買い増しや自社株の買い戻しなど複数の手段で市場の期待を安定させようとしている。
中国誠通控股集団は、傘下の誠通金融と誠暘投資を通じてETFと中央企業の株式を買い増し、「長期投資家としての役割を果たす」と強調した。資本運用を通じて上場企業の質の高い成長を支える方針だ。
中国国新控股は、特別再貸出を活用して800億元(約1兆5642億円)規模の第一弾買い増し計画を開始。中央企業の株式、ハイテク関連株、ETFなどを対象とし、「忍耐強い資本」「戦略的資本」として、重要分野の技術革新を支援する。
中国電子科技集団は、自社の上場子会社の株式を200億元(約3910億5600万円)超にわたり買い戻すことで、産業間の連携と技術革新を強化し、企業価値の安定を図っている。
今回の中央企業の動きは、従来の市場安定策とは異なり、それぞれの戦略に特色があるが、根底にある考え方は共通している。つまり、国有資本の戦略的な配置を通じて、資本市場の安定を図り、実体経済を力強く支えるという点で一致している。
その背景には、国有資本が二つの主要な方向性に焦点を当てていることがある。
一つ目は、中央・国有企業の価値再評価の促進だ。現在、中央企業の上場企業は全体的に低い評価に甘んじており、その経済的地位と評価とのギャップが指摘されている。中央企業の株式を買い増すことで、企業価値の見直しを市場に促し、市場の再評価を引き出す狙いがある。例えば中国電子科技集団は、グループ傘下企業の買い増しによって投資家への利益還元を図るとともに、産業チェーンの統合を加速し、「チェーンマスター企業」としての相乗効果を引き出している。
二つ目は、ハードな技術革新への支援だ。各中央企業がこぞってテクノロジー関連株に注力しているのは、中国の「イノベーション主導型成長戦略」との強い一致を示している。中国国新控股は資金の使途を「重要分野の技術革新」に明確に定め、中国誠通控股集団もテクノロジー関連銘柄を中央企業株と並ぶ主要な投資先と位置づけている。国有資本は、資本というつながりを通じて、テクノロジー企業に単なる資金支援を提供するだけでなく、技術の実用化や市場応用という「最後の一歩」を後押ししているのだ。
また、今回の一連の動きは、単なる短期的な市場支援とは異なり、「長期資本」としての性質が強調されている。中国誠通控股集団が「継続的かつ大規模な買い増し」を公言し、中国国新控股が「忍耐強い資本」と位置づけたように、長期的視点と価値投資の重要性が強く打ち出されている。これは資本市場の健全かつ安定的な発展を後押しすることにつながる。
具体的には、まず資本市場の構造が改善される。継続的な株式買い増しによって、上場企業への信頼が高まり、中長期資金の呼び込みが進み、投資家構成の健全化が期待される。次に、産業と金融の連携が進む。一部の中央企業は、買い増しと技術革新、産業連携を結びつけ、「テクノロジー―産業―金融」の好循環を加速させ、資本と実体経済の一体化を進めている。
今後、資本市場の安定と信頼回復において、中央企業の上場会社が「バラスト」(安定の重し)として果たす役割は、ますます重要性を増していくだろう。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News