【4月26日 Peopleʼs Daily】先日、浙江省(Zhejiang)の杭州文化広播電視集団(HCRT)の報道番組「杭州ネットワークニュース」で、AIデジタル人間がニュースを読み上げ、誤読率ゼロを達成し、社会的に注目を集めた。

 デジタル人間とは、デジタル技術を用い人間の特性を模倣してデジタル世界の中に造り出された「仮想キャラクター」を指す。

 近年、5G、AI、VRなどの新世代の情報技術の急速な発展に伴い、デジタル人間の外見や動きの細部、また知能レベルも向上し続け、多くのデジタル人間の日常生活への融合が加速している。

「杭州ネットワークニュース」にはすでに6人のデジタルキャスターが「配属」されている。いずれも本物の人間そっくりの外見で、リアルな表情や動きをする。デジタルキャスターは、画像と音声の収集とアルゴリズムのトレーニングを終えて、今ではニュース生放送で正確にニュースを伝える能力を備えている。そのため、人間のニュースキャスターが正月休みを取る時には、AIキャスターが代役を務めるというケースが起こっているという。

 最初に生成AI「DeepSeek-V3」 に接続されたのは、杭州テレビ局のニュースキャスター・雨辰(Yu Chen)さんのデジタル分身「小雨(Xiao Yu)」だった。「小雨」は人間の言語を理解し、ニュースをアナウンスできるだけでなく、原稿を確認し、ニュース素材との整合をとることができる。

 業界関係者に話によると、これまでテレビ局によるデジタルキャスターの使用は、インターネットやニューメディア側からの試みであったが、今やデジタルキャスターは日々の番組や週ごとの放送にも登場するようになったという。

「中国インターネット協会」の専門家諮問委員会の武鎖寧(Wu Suoning)委員は「近年、AIとデジタル人間のテクノロジーがメディア業界の変化を促す主要な原動力となりつつあり、『人間と機械のデュアルトラックシステム』という新しい形式の協調パラダイムが生まれている。例えば、AIが天気予報やニュース速報などの単純な標準化コンテンツを処理し、人間の方は詳細な報道やニュース解説などの複雑で創造的な作業に集中するという分担が可能になった」と説明する。

 また「将来、『AI大規模モデル』の論理的な推理や自律的判断などの領域が向上すれば、デジタル人間がニュースコンテンツに対して高い相互応答性と個性化をもたらし、より柔軟で効率的なコンテンツの制作と配信が可能になるだろう」と予測している。

 デジタル人間は、テレビ番組のニュースキャスターとして頭角をあらわすだけでなく、オンライン・ライブ配信の分野でも活躍が始まっている。

「皆さん、ライブスタジオへ、ようこそ。私たちは・・・・」、大晦日の夜、ある飲料ブランドのライブ配信スタジオでは、デジタルキャスターが巧みなオープニングの挨拶を披露していた。これは、そのブランドの本物のMCのイメージで作成されたデジタルMCだ。

 同ブランドは「春節(旧正月、Lunar New Year)の休暇期間中は、優秀な本物のキャスターは不足し、コストも高い。デジタルキャスターを使えばコストが効果的に削減できる。しかもAIの質疑応答機能で質問にリアルタイムで答えるだけでなく、対話や場を盛り上げる機能によって、視聴者とのやり取りが活発になり、ライブ配信の盛り上がりや購買の雰囲気づくりにもつながっている」と説明する。

 データによると、同ブランドの春節期間中のデジタルMCによるライブ配信では「コンバージョン率」(広告をクリックしたユーザーがアクティブユーザー、登録ユーザー、さらには有料ユーザーになる率)が50パーセント以上も増加している。

 Eコマースのライブ配信の業界では、ライブを進行するMCの人件費が高く、しかも長時間のライブでは疲労が蓄積しがちだった。それに対しデジタルMCは毎週7日、毎日24時間オンライン配信が可能で、しかもAIが自律的にライブ放送の台本を作成する。まさに「低投資、高効率、長期継続」の三拍子が実現し、それゆえ多くのEコマース業者がすでに「お試し」を始めている。

 中国のインターネット検索大手「百度(Baidu)」が開発したAIフルスタック型デジタル人間ライブ配信ソリューション「慧播星(huiboxing)」の関係者の話によると、技術的には、わずか30~40分の実際のライブ配信映像があれば、それに対応したデジタルMCを生成することができるし、あらかじめスクリプトや質疑応答の設定を行えば、すぐに効率的な配信が可能になり、音声と口の動きも自然に一致し、発音も正確で、大きな動作もスムーズかつ自然に再現されるという。

 業界では、デジタル人間によるライブ配信は、創造性、革新性、コスト管理の面で優位性があると考えられている。しかし、実際のキャスター同士がやりとりする複雑な内容と比較すると、デジタルMCはまだ柔軟性やスムーズさに欠け、継続的なアップグレードと蓄積がまだまだ必要だとも言われる。さらに、プライバシー保護、データセキュリティ、倫理問題など、デジタル人間の今後の発展において無視できないリスクもまだ残されている。

 報道によると、バーチャルアイドル、バーチャルMC、デジタル従業員は、商業用デジタル人間の最も人気の高いカテゴリーとなっている。昨年開催された「第1回中国デジタル人間大会」で発表された「中国デジタル人間発展報告(2024)」では、今年は中国のデジタル人間の中核的な市場規模が480億6000万元(約9890億7480万円)に達し、この分野の産業全体の市場規模は6402億7000万元(約13兆1767億5660万円)に達するという予測が出されている。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews