2025年4月15日、北朝鮮・平壌の和盛地区で住民とささやくように会話する娘=朝鮮中央テレビ(c)news1
2025年4月15日、北朝鮮・平壌の和盛地区で住民とささやくように会話する娘=朝鮮中央テレビ(c)news1

【04月18日 KOREA WAVE】北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党総書記の娘が住民と握手を交わし、耳元でささやくなど、これまでにない“直接的な交流”を見せた。その様子が北朝鮮メディアで初めて報じられ、話題になっている。これまで控えめな態度で父の背後に立っていた姿とは一線を画し、事実上の「後継者」としての地位を強めているとの分析が改めて浮上している。

北朝鮮の朝鮮中央テレビは16日、キム総書記が娘とともに、平壌・和盛地区で開催された「第3段階・1万世帯住宅建設完工式」(15日)に出席した様子を報道した。

娘はこの日、母リ・ソルジュ(李雪主)氏を思わせるハーフアップの髪型に、白いブラウスと黒いパンツ、茶色のレザージャケット、高いヒールの靴という成熟したスタイルで登場。舞台上ではキム総書記の隣に座って公演を観覧し、テープカットの際にはすぐ後ろで拍手を送るなど、常にキム総書記のそばにいた。

完工式の終盤にはキム総書記が舞台を降りて住民の元へ歩み寄り、子どもを抱きしめ高齢者と抱擁するなど「人民愛」パフォーマンスを見せた。娘もそれに続き、住民に自ら手を差し出して握手し、耳元でささやくように話しかける様子が映し出された。さらに式典の最後には、父の横で手を振りながら“ロイヤルファミリー”らしい振る舞いを演出した。

これまで公の場では控えめで表情も硬かった娘が、住民と直接交流する姿を見せたのは今回が初めてで、明らかに計算された演出と見られている。

専門家らは、この娘の登場が単なる家族の同行ではなく、戦略的に「後継者像」を構築する意図を持った政治的動きであると分析する。

リ・ソルジュ氏や、キム総書記の妹キム・ヨジョン(金与正)副部長の初期の登場と同様に、「キム・ファミリー」の女性が政権の周辺で存在感を強めていく“定石”を踏んでいる形だ。

また、最近ではリ・ソルジュ氏が公の場に1年4カ月以上現れておらず、キム・ヨジョン氏も北朝鮮メディアの映像からは画角の外に押し出されることが増えている。これは娘に対する国民の注目度を高めるための「演出空間」を確保している可能性がある。

慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「娘が住民と直接交流する姿は、まるで“ファーストレディ”の代理を務めているかのようで、後継者としての役割が徐々に付与されつつある兆候でもある」と指摘した。

さらに、映像では娘が完工式の記念公演で、芸術団の歌に合わせて一緒に歌う姿も確認されている。これは体制賛美の歌詞を暗記し、口ずさめるという点から、彼女に対する「後継者教育」がすでに本格化していることを示唆している。

国家情報院は2023年3月、国会情報委員会への報告で「娘は正規の学校に通っておらず、平壌で“ホームスクーリング”形式の教育を受けており、科目には乗馬、水泳、スキーなどが含まれている」と説明していた。また、同年7月には「北朝鮮は娘を有力な後継者として示唆し、後継者訓練を進行中だ」と明らかにしている。

わずか12~13歳とみられる少女の「後継者化」は、今後さらに本格化する可能性が高く、北朝鮮の体制運営における“王朝的継承”の演出が続いていることを物語っている。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News