考古学と人工知能が出会う時・中国
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【4月6日 Peopleʼs Daily】考古学と人工知能(AI)。一方は土埃の中での丹念な発掘作業、人類の歴史の徹底的な発見、探求、理解。もう一方は強力な演算能力、膨大な情報の迅速な処理能力、無限の潜在力。一見何の関連性もないように見えるこの2つの学術分野は、今や深く結びつき、ディープラーニングを中核とする現代の人工知能は、考古学の研究分野にも、ますます応用されるようになっている。
鬱蒼(うっそう)とした森を透視し、地下に埋もれた古代遺跡を見通す「透視眼」を持っていると想像して欲しい。この「透視眼」に相当するのが、レーザースキャニング技術のマジックだ。これが考古学の分野の「X線」であり、飛行機の上からレーザービームを発射して地面をスキャンし、密林の奥深く隠れた古代都市をも鮮明にとらえることができる。この技術で生成されるデータ量は膨大で、都市全体をハイビジョン撮影するようなものだ。
考古学者と人工知能の専門家は「畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)」などのディープラーニング技術を用いて、膨大なスキャニングデータから古代遺跡を自動的に識別する人工知能「アシスタント」を訓練し、まさに手間を半減し効率を倍増させている。
甲骨文の断片を組み合わせる事例を考えてみよう。甲骨文は中国古代の殷(商)王朝の占いの記録であり、当時の王朝の歴史と文明の研究にとって重要な資料だ。これまでに10万点以上の甲骨文の断片が発掘されている。
最近、中国の考古学者と人工知能の科学者たちが、新しいジグソーパズル型の「神の道具」、すなわち「内部相似性ネットワークモデル」を考案した。甲骨文の破片の組み合わせというジグソーパズルは、3つのステップで解くことができる。
まずはじめは「エッジを見つける」ステップで、「エッジ等距離マッチング・アルゴリズム」を使用して、断片のエッジに沿って慎重に検索し、形状に相似性がある「かみ合わせ」パーツを見つけ出す。ジグソーパズルで、まずは枠に沿ったピースからはめていくのと同じだ。
次に「ピースを合わせる」ステップでは、2つのピースの断片画像を「組み合わせ」して、完全に接合できるかどうかを確認する。
そして最も重要な「細密紋様検証」のステップでは、接合部分のテクスチャー(接合部の詳細な凹凸、色合い、質感など)が一致しているかどうか、また接合部分に文字がある場合は、その文字が接合できるかどうかを分析する。
もし2つの断片が元は1つのものであったなら、接合部分のテクスチャーは当然一致するはずだ。このモデルは「内部相似性プーリング」と呼ばれる技術を使用し、破片同士のテクスチャーの類似性を正確に比較するものだ。実験によれば、このモデルのパズル解読精度は90%を超えることが分かっている。この「神の道具」は、すでに考古学者が37組の甲骨文字の断片を正確に組み合わせるのに役立っている。
世界文化遺産であるペルー南部の「ナスカの地上絵」は、古代文明が我々に残したパズルだ。この巨大な地上絵は数百メートルにわたって広がっていることが多く、地上からでは識別が困難だ。全体像は上空からしか見ることができず、考古学調査の大きな問題となっていた。長い間、考古学者は時間と労力を費やす手作業での探索や低空飛行による観察・撮影に頼らざるを得ず、非効率で調査漏れが生じやすいものだった。
この100年間で、考古学者は430の地上絵を発見した。それが、人工知能アルゴリズムの導入後は、わずか6か月で新しく303の地上絵が発見された。このアルゴリズムは、経験豊富な「探偵」のようなもので、高解像度の航空写真を分析することで、候補となる図形の輪郭を明らかにし、考古学者はそれを確認すればよいだけとなる。これにより、調査と研究の効率が大幅に改善された。 人工知能は、多くの専門分野の研究方法を、これまでにないスピードで変化させ、科学的研究を新たな時代へと導いている。科学の発見プロセスを変え、我々の洞察力と予測力を高め、我々がより深く過去を理解し、現在を把握し、未来の課題に対応する手助けとなるものなのだ。(c)PeopleʼsDaily/AFPBBNews