【3月27日 東方新報】本来は学びの場であるはずの「講座」が、高齢者を狙った悪質商法の舞台となっている。最近、無料体験や健康講座を装って高齢者に高額商品を売りつける「高齢者搾取講座」が、全国各地のスーパーや農産物直売所などで広がっている。

 最近では、無料体験や名講師による授業をうたって高齢者を集め、実際には高額講座や健康商品を売り込むケースが増えている。たとえば、ネットで人気の健康体操「立禅」を無料で案内した講座では、わずか3日後から「精華クラス」などの有料コースへの参加を強く勧められるようになったという。講師やスタッフは「病気になって子どもに迷惑をかけたくないですよね」などと不安を煽り、焦らせる言葉で誘導。価格も「通常3980元(約8万1680円)→限定1980元(約4万634円)→さらに1080元(約2万2164円)」と次々に下げながら購入を迫る手口も使われていた。

 また、こうした講座を展開していた企業は上場企業の関連会社で、中高年向けの「学堂」と称し全国で事業を展開していた。しかし消費者相談サイトには「高額すぎる」「返金に応じない」「講座の内容が約束と違う」などの苦情が数多く寄せられている。

 さらに、講座が健康食品や医療器具の販売会と化しているケースもある。北京市のある農産物直売所では、普通の野菜売り場の裏で高齢者が毎日講義を受けており、その内容は「セレンはがんに効く」「セレンが足りないと病気になる」といった誇張表現ばかり。ある女性は、両親がこの店でセレン強化食品を次々に購入し、半年間で3万元(約61万5681円)を支払っていたという。製品は一般食品でありながら、効果効能を誤認させるような話ばかりで、専門家は「これは違法な医療効果の宣伝にあたる」と指摘する。

 別の事例では、老人が1回の講座で10万元(約205万2270円)相当の健康食品を購入していたことも判明した。問題なのは、こうした販売は非常に閉鎖的な場で行われており、毎朝変わるパスワード付きの専用リンクで講義に参加、現金取引が原則という仕組みのため、行政による監視が難しい点だ。

 被害にあった家族が消費者ホットラインに通報しても、「商品は合格品であり、販売手法に違法性がない」として返金対応しかされない場合も多い。法的には、老年教育機関を装った商法への対応が遅れており、取り締まりが難しいのが現状だ。

 微信(ウィーチャット、WeChat)などのプラットフォームもようやく対応を始め、健康系ライブ配信での違反広告を規制すると発表したが、抜本的な対策とは言えない。

 高齢者講座は本来「老後の学び」の場であるべきだ。それがいつしか「高齢者搾取の温床」になってしまっている現状に、社会全体で警鐘を鳴らす必要がある。高齢者への消費教育の強化と、法整備・監視体制の拡充が急務だ。(c)東方新報/AFPBB News