トランプ氏、移民「送還」めぐり司法判断と対決
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【3月18日 AFP】ドナルド・トランプ米大統領は17日、米国内で拘束されていたギャング構成員とされるベネズエラ人200人超をエルサルバドルの刑務所へ送還し、連邦判事の国外追放差し止めを無視した疑いが浮上している問題で、司法判断と対決する構えを鮮明にした。
トランプ氏は14日、1798年の立法以来、戦時下に3回発動されただけの「敵性外国人法」を発動する命令に署名。この法律に基づき、自らが外国テロ組織に指定したベネズエラのギャング「トレンデアラグア」のメンバーとされる238人を国外追放し、有償での受け入れを申し出たエルサルバドルに移送した。
連邦地裁のジェームズ・ボースバーグ判事は17日、自らが命じた国外追放命令の差し止めをホワイトハウスが意図的に無視し、エルサルバドルへの移送が行われたと思われる問題について、審理を開いた。
一方、トランプ政権下の司法省の弁護団は判事に対し、判事が書面による出国差し止め命令を出した時点で、送還者はすでに米国を離れていたと報告。また、航空機が米国の領空を離れた時点で、連邦地裁判事には管轄権がなくなると主張した。
司法省はこれに先立ち、審理の取り消しを求め、「大統領の国家安全保障および外交権限」への干渉だと主張していた。また、ボアスバーグ判事が審理を続行すると語ると、政府側の弁護団は連邦控訴裁に対し、同判事をこの件から外すよう申し立てた。
判事は審理について「事実調査」のための手続きと位置付け、直ちに判決を下す予定はないと述べた。
この件についてホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は、トランプ政権は「トレンデアラグア」を外国テロ組織に指定しており、「敵性外国人法」の適用は正当だと記者団に語った。
またマルコ・ルビオ国務長官は、エルサルバドルに移送された移民は全員、同国のギャング「マラ・サルバトルチャ(MS-13)」やベネズエラの「トレンデアラグア」のメンバーで、自国で指名手配されている犯罪者だと主張。
ルビオ氏は米FOXニュースラジオで「彼らは最初からわが国にいるべきではなかった」「その飛行機に乗っていた全員が何らかの形で、不法にわが国にいたと言える」と話した。
トランプ氏は昨年の大統領選中、不法移民の取り締まり強化を公約に掲げ、移民による犯罪が急増していると主張してきたが、その見解は公式統計とは食い違っている。
今回の件で、トランプ政権は保守派が多数派を占める最高裁での法廷闘争を望んでいるとみられ、大統領権限の範囲を試す試金石となる可能性がある。
トランプ氏はこの他にも、バイデン前大統領が下した恩赦を無効にしたと明らかにするなど、大統領権限拡大に向けた動きを見せている。こうした動きは、トランプ氏が司法判断を無視し、米国の憲法上の権力バランスを覆す、あるいは少なくとも独自に解釈し直すのではないかとの懸念を高めている。(c)AFP