中国の科学者、末期がん患者が「極度に痩せる」謎を解明
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【3月12日 Xinhua News】中国北京大学の研究チームが、末期がん患者が極度に痩せ、身体機能が著しく低下する「がん悪液質」のメカニズムを解明した。腫瘍細胞が生成するサイトカイン「MIF」が、患者の脂肪組織生成能力を「不可逆的」に低下させ、病状の進行を促進する「元凶」であることが分かった。研究成果はこのほど米科学誌「セル・メタボリズム(Cell Metabolism)」電子版に掲載された。
がん悪液質は末期がん患者によく見られる症候群で、極度の痩せなどを特徴とし、栄養補給を続けても体重を回復させることが難しい。患者の生活の質に深刻な影響を与え、直接的な死因ともなるが、これまでは発症メカニズムが解明されておらず、有効な治療薬も乏しかった。がん悪液質の病理学的メカニズムと主要な因子を見つけ出し、介入手段を開発することは、患者のがん治療への忍容性を高め、生存期間を延ばす上で重要な意義を持つ。
北京大学未来技術学院院長の肖瑞平(しょう・ずいへい)教授と北京大学分子医学研究所の胡新立(こ・しんりつ)研究員率いる研究チームが、マウス実験を通じて腫瘍細胞と脂肪幹細胞の相互作用を比較分析した結果、腫瘍に関わるサイトカインMIFが脂肪幹細胞の慢性炎症反応を活性化し、炎症因子の分泌を高め、脂肪組織の線維化を引き起こし、脂肪幹細胞が成熟脂肪細胞に分化する能力を弱め、がん悪液質の発症を促進することが分かった。
さらに研究を進めると、肺がんや胃がん、大腸がんの患者の血液におけるMIFレベルの有意な上昇が、患者の体重減少の程度と高い相関関係にあることも判明した。研究者らはマウス実験を通じ、遺伝学的手法や薬剤によってMIFの発現を抑制すると、脂肪組織の萎縮や悪液質のその他の臨床症状を効果的に緩和できることを突き止めた。
胡氏は「MIFこそ脂肪組織の『不可逆的な』損失を生む鍵だ」と指摘する。MIFが脂肪幹細胞上の非定型ケモカイン受容体3(ACKR3)との相互作用を通じて炎症因子の生成を促進し、脂肪組織の脂肪蓄積能力に影響を及ぼすことで、いくら患者に栄養とエネルギーを補給しても、体重を回復させることが難しくなると説明。「この問題を解決できれば、患者は栄養補給によって脂肪組織を正常に機能させることができるようになり、身体機能が維持され、薬剤への忍容性も高まり、薬の選択の幅が広がる」と述べた。
肖氏は研究成果について、がん悪液質の発症メカニズムと鍵となる分子に対する理解を広げ、臨床治療の新たな標的を提供するもので、がん患者の生活の質と予後を改善するための新たな方策を立てるのに役立つと期待を示した。(c)Xinhua News/AFPBB News