【3月11日 CNS】電子商取引(EC)業界では、浙江省(Zhaejiang)や広東市(Guangdong)が伝統的な強者とされてきた。しかし、近年、北方の省である河北省(Hebei)が急速に台頭している。

 50元(約1019円)もしない軍用コート、十数元の釣り竿、数元のTシャツ……河北のECは「戦場に突入した野戦部隊」と呼ばれ、高いコストパフォーマンスを武器に、飽和状態の市場で強引に道を切り開いた。

 この勢いは河北の経済指標にも表れている。2024年、河北の年間オンライン小売総額は4940.7億元(約10兆779億円)に達し、前年比8.8%の成長を記録した。そのうち、物販のオンライン小売額は4405.4億元(約8兆9860億円)で、7.1%増加した。

「河北のECは義烏市(Yiwu)の商人すら脱帽する」との評判が広まり、河北のEC市場は一躍注目を集めた。しかし、河北のECは単なる価格競争にとどまることなく、着実に成長を続けている。

 河北滄州市(Cangzhou)では、ペルーのバイヤーが検品を終えると同時に、カラー鋼板の設備や付属品が出荷される。問い合わせから製品の納品、関連部品の一括調達まで、わずか15日で完了するスピード感がある。雄安新区(Xion’gan)では、ぬいぐるみ、プラスチック包装、羽毛製品といった伝統産業が、朱各荘 (Zhugezhuang)、白洋淀(Baiyangdian)、晾馬台(Liangmatai)の3つの越境EC産業園を通じて世界へと進出し、3年間で貿易額は5倍、成長率は32倍に達した。

「流通の最終地点はEC、ECの最終地点は海外市場」と言われるが、河北の戦略転換はまさにこの言葉を体現している。

 河北がこの成長を遂げた背景には、いくつかの要因がある。まず、強力な産業基盤がある。「カシミヤの都」と呼ばれる河北省清河県(Qinghe)には牧場も羊の生産もないが、カシミヤ産業の従事者が約10万人、企業が1万社以上集まり、世界のカシミヤ製品の50%、中国国内の60%がここで取引されている。そのほかにも、安平県(Anping)の金網、白溝鎮(Baigou)のバッグ、平郷県(Pingxiang)の子供用自転車など、多くの地域特化型産業が発展している。河北全体では333の産業クラスターが形成されており、工業情報化部(工信部)に認定された中小企業特化型の産業クラスターは17か所と、全国第2位の規模を誇る。

 多様な産業が密接に結びつき、頻繁に相互作用することで、強固な商業エコシステムが形成されている。商人が集まり、どんなに小さな商品でも大量生産が可能となることで、規模のメリットやブランド力が生まれている。

 また、コスト競争力の面でも優位性がある。コストは製品の競争力を左右する重要な要素であり、河北は労働力、土地、税制面での優位性を持つ。河北の地方都市でネットショップを経営する事業者は、「私のチームは4人で、仕入れ、運営、カスタマーサービス、梱包をすべて担当しています。年間の家賃は約5500元(約11万2188円)、熟練スタッフの月給は約4000元(約8万1591円)、生活費は1人あたり月2000元(約4万795円)程度。人件費や生活コストの負担が軽いため、節約した資金を広告や事業拡大に回せるんです」と語る。このような環境は河北全体に広がっており、多様な業種のEC事業者が活動している。

 地理的な優位性も見逃せない。同じく人件費や土地コストが低い中西部の地域と比較して、河北は華北平原に位置し、地形が平坦で交通の便が良い。北京や天津といった主要市場が近く、物流面でも大きな利点を持つ。河北には「こんなに近くて、こんなに美しい、週末は河北へ」との観光キャッチフレーズがあるが、物流においても北京市・天津市(Tianjin)に近いという地の利を活かし、北方の物流ハブとしての地位を確立している。昨年、石家荘の国際郵便交換局が「三関合一」(税関・検疫・物流の一体化)を実現し、河北省の物流企業やECプラットフォームの運営コストを約25%削減する効果を生んだ。

 政府やECプラットフォームの支援も重要な要素だ。近年、河北省政府はEC支援策を次々と打ち出し、企業の製品開発や技術革新を積極的に促している。2024年には、農村ECの発展を加速させるため、「リーダー県」の育成を掲げ、地方のEC市場の活性化を図っている。主要ECプラットフォームも、河北の産業帯を支援するためのプログラムを相次いで発表。出店のハードルを下げ、流入支援や研修サービスを提供することで、河北のEC事業者が急成長できる環境を整えている。

 着実に実績を積み上げてきた河北は、今、さらなる市場拡大に向けて加速している。2024年以降、河北は「越境ECによる産業帯の活性化」を推進し、条件を満たす企業、産業園、海外倉庫に対する支援を強化。唐山市(Tangshan)の陶磁器、霸州市(Bazhou)の家具といった伝統産業クラスターも、この越境ECの波に乗りつつある。石家荘市(Shijiazhuang)では21の越境EC産業園を整備し、滄州では380の伝統企業が海外進出を果たした。河北省初の総合保税区である曹妃甸総合保税区では、2024年の越境EC取引件数が296万件を突破し、前年比200%増加した。

 河北に限らず、国際情勢が複雑に変化する中で、越境ECは中国の対外貿易において重要な成長分野となっている。2024年、中国の越境ECの貿易額は2.63兆元(約53兆6465億円)に達し、前年比10.8%増加。全体の輸出入に占める割合も6%と拡大した。

 コストパフォーマンスが市場参入の鍵となり、産業帯が基盤となり、越境ECが新たな道を切り開く。河北のEC産業の変革は、新たなチャンスを生み出すとともに、中国の伝統的な貿易モデルの転換を象徴するものとなっている。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News