【3月6日 AFP】スイス国民議会(下院)で5日、モバイル・カード決済が主流となる中、現金の常時流通を憲法に明記する法案が可決された。

思想行動の自由を主張する市民団体「スイス自由運動」は先月、この問題の是非を問うイニシアチブ(国民発議)をめぐり、国民投票の実施に必要とされる署名10万筆を政府に提出した。同団体は、新型コロナウイルスの感染拡大期に課された公衆衛生上の制限にも異議を唱えていた。

同団体が提唱する今回のイニシアチブは、「紙幣・硬貨による自由で独立したスイス通貨を支持する(現金は法で認められた権利)」というもので、スイス憲法にスイス・フラン紙幣と硬貨の常時流通を定めた条項の追加を求めている。

政府はこのイニシアチブに反対。その上で、「経済と社会における現金の重要性」を認めた対案を提出していたが、同案は圧倒的多数で否決された。

これにより、全州議会(上院)での審議に持ち込まれた。

スイス国民の決済動向を調査している「スイス・ペイメント・モニター」によれば、現在、同国では現金決済は全体の4分の1程度に落ち込んでいる。

昨年10月と11月に、スマートフォンなどのモバイル決済が初めて首位に立ち、市場シェアの30.7%を占めた。デビットカードは24.4%で2位、現金は24.2%だった。

スイス中央銀行のマルティン・シュレーゲル新総裁は昨年10月、スイス・フランの新紙幣発行計画を発表し、モバイル・カード決済の市場シェアは増加しているものの、現金は「今後も広く使用される決済方法」であり続けると明言。

停電や技術的な問題が発生した場合などは、現金の方が利点があると指摘した。(c)AFP