【2月28日 AFP】神出鬼没の英国の覆面ストリートアーティスト、バンクシーの影響を探る二つの企画展が、グラフィティや壁画が多いことで知られるセルビアの首都ベオグラードで開催され、ストリートアートの商業化をめぐり、多様な議論が交わされている。

バンクシーは数十年にわたり、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸、英ロンドン、米ロサンゼルスなどの公共空間に、人知れぬうちに作品を残してきた。また、自身の作品を展示する展覧会を公認したことはほとんどない。

ベオグラードで開催中の展示の一つは、「バンクシー」と題されたもので、スロベニアの画廊が企画。ギャラリーや博物館、個人コレクションから貸し出された作品で構成されており、入場料は1300セルビア・ディナール(約1700円)となっている。

この展覧会が有料であることに一部から批判が上がり、対抗する無料の展示「フェイク・バンクシー、リアル・メッセージ」が開催されることとなった。

同展のキュレーター、ネマニャ・ヤニッチ氏は、アーティストの同意なしに入場料を徴収している「バンクシー」展について、バンクシーの反体制的メッセージと矛盾すると批判。「彼のアートは、何よりも消費主義、エリート主義、そして商業主義に対する批判であり、アートはすべての人に開かれるべきだという明確なメッセージを持っている」と述べた。

ヤニッチ氏の展覧会では、訪問者が紙のシュレッダーを使ってアートプリントを破壊できる。これは、2018年にロンドンのサザビーズでバンクシーの絵画が売却直後に自壊した作品「ラブ・イズ・イン・ザ・ビン」へのオマージュである。

「フェイク・バンクシー」展を訪れたベオグラード在住の女性は、「彼の作品は大量消費のためのものではない。彼は資本主義者でも商業主義者でもない」とAFPに語った。

ベオグラードは長年にわたり、ストリートアートの街として知られてきた。市内では、戦争指導者、ロックスター、詩人の肖像画のほか、ロシアへの国家主義的な賛辞や隣国コソボに対する領有権の主張をテーマにしたさまざまなストリートアートやメッセージを見ることができる。

最近の学生主導の抗議デモでは、参加者がバンクシーの有名な作品「赤い風船と少女」を再解釈し、反汚職運動のシンボルとされる「血の手形」を加えた。(c)AFP