【2月28日 AFP】タイは27日、少数民族ウイグル族の40人を中国に強制送還し、国際社会から直ちに非難を浴びた。

中国政府は北西部の新疆ウイグル自治区で人権侵害を行い、ウイグル族やその他のイスラム系少数民族約100万人を収容しているとされる。中国はこれを否定している。

人権団体はここ数週間、タイ政府が国内の入管施設に収容しているウイグル族の48人を強制送還する準備をしていると警告していた。48人は10年以上前に中国から逃れ、送還される恐怖に常におびえて生活していたという。

キットラット・パンペッチ警察庁長官は27日、送還したことを認め、中国政府がウイグル族の40人の返還を要請していたと述べた。

キットラット長官は記者団に、「中国政府はタイ政府に書簡を送り、誠意とウイグル族の面倒を見る意向を伝え、彼らの住居と安全を保証した」と述べ、引き渡しは円滑に行われ、40人は抵抗しなかったと語った。

タイは2015年にもウイグル族の109人を中国に強制送還し、米国と国連から厳しく非難された。だが、新たな送還計画の存在は繰り返し否定していた。

送還をめぐり、国際社会からは非難の声が上がっている。

国連のボルカー・ターク人権高等弁務官は27日、送還について「拷問や虐待、その他の取り返しのつかない危害が現実的に予想される場合には、完全に禁止されている」と述べた。

マルコ・ルビオ米国務長官は、「ウイグル族の少なくとも40人を中国に強制送還したタイを最も強い言葉で非難する。彼らは中国で適正手続きの権利を持たない。中国ではウイグル族が迫害や強制労働、拷問を受けている」との声明を出した。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は送還を「タイの国内法および国際法に対する明白な違反」と非難し、送還された男性たちは「今、中国で拷問、強制失踪、長期の投獄の危険に直面している」と述べた。

タイ政府はこうした懸念を認めたが、国際法に従って行動したと主張した。

中国公安省は、国際法に従い、中国人「不法移民」40人がタイから国外追放されたと発表した。

中国外務省はその中にウイグル族が含まれているかとの質問に対し、「中国国籍を持つ」とだけ述べた。

外務省の林剣報道官は定例会見で送還について、「越境犯罪との闘いにおける(中国とタイの)協力の具体的な措置だった」と説明。「当事者の正当な権利と利益は完全に保護された」と述べ、詳細については言及を避けた。

中国公安当局は声明で、送還された人々は「犯罪組織にだまされて不法に(中国を)出国し、タイにとどまっていた」「彼らとその家族は大きな被害を受け、親族は彼らが祖国に帰還できるよう中国政府の支援を繰り返し要請してきた」と述べた。(c)AFP