【2月13日 AFP】米イリノイ州で昨年黒人女性が自宅で白人保安官に射殺された事件をめぐり、地元の保安官事務所と郡が遺族に1000万ドル(約15億4000万円)を支払うことで和解が成立した。

2児の母親で、精神疾患で治療を受けていたソニア・マッシーさん(36)は昨年7月、家の中に不審者がいるようだとして警察に通報。サンガモン郡の保安官代理2人が真夜中すぎに自宅に駆け付けた。

警察用ボディーカメラの映像には、マッシーさんが2人と話し、身分証明書の提示を求められて財布の中を捜している様子が捉えられている。

その後、保安官代理のショーン・グレイソン被告は、コンロの上で沸騰している鍋を確認するようマッシーさんに求め、「ここにいる間に火事はごめんだ」と話し掛け、キッチンからリビングルームの方に後ずさりした。

その理由をマッシーさんに聞かれ、「あなたが手にしている沸騰した湯から離れるためだ」と笑いながら答えた。

鍋を持ったマッシーさんが冷静に、「イエス・キリストの名においてあなたを非難する」と応じると、グレイソン被告は銃を抜き、「ふざけるな。こっちこそ神に誓っておまえの顔を撃ってやる」と威圧。

謝罪しながらカウンターの後ろにしゃがみ込んだマッシーさんに「鍋を下ろせ」と叫び、マッシーさんの顔に3回発砲して殺害した。

事件は全米で関心を集め、当時のジョー・バイデン大統領も「彼女は今も生きているべきだった」と非難した。

遺族の代理人弁護士を務めるアントニオ・ロマヌッチ氏は、「ソニアさんは助けを求めて通報した」「911に電話したことで死刑宣告を受けるとは思いもしなかっただろう」と述べている。

サンガモン郡議会が11日、遺族に1000万ドルの和解金を支払うのを承認したことを受け、遺族のもう一人の代理人弁護士、ベン・クランプ氏は12日にズームで記者会見を開き、議会の対応を評価。

一方で、「彼女が37歳を迎えるはずだったこの日に、画期的な和解を発表するのは非常に複雑な気持ちだ。これは正義への第一歩にすぎない」と述べた。

グレイソン被告は殺人罪で起訴され、無罪を主張している。(c)AFP