【1月30日 CNS】山東省(Shandong)政府の業務報告によると、2024年のGDPは9兆8600億元(約210兆1028億円)に達し、前年比5.7%増加した。これは全国平均(5.0%)を0.7ポイント上回る成長率だ。

 2025年には経済成長率5%以上を目標とし、GDPはついに10兆元(約213兆円)を突破する見込みだ。これにより、山東省は広東省(Guangdong)、江蘇省(Jiangsu)に次ぐ 「第3の10兆元経済圏」となる。北方地域では初の「10兆元都市」となることが確実視されている。

 10兆元とはどれほどの規模か?世界的に見れば、10兆元のGDPは世界経済ランキングで16位前後 に相当し、オランダやトルコなどの国家を上回る。

 国内に目を向けると、山東省は中国第3位の経済規模、第2位の人口を誇る省であり、GDP成長率は4年連続で全国平均を上回っている。2024年も産業・投資・消費の主要指標が全国平均を超える水準で推移した。

 では、山東が経済成長をけん引する力を持つ理由とは何か?三つの視点から見ていく。

 山東省の強みは、農業・工業・サービス業のいずれにも突出した成長力を持つことにある。

 たとえば農業では、「斉魯糧倉」の名のもとに食糧供給を強化し、2024年の農林牧漁業の総生産額は1兆2800億元(約27兆2750億円)に達し、全国トップを記録。さらに、農産物輸出額も26年連続全国1位を維持している。

 工業はさらに強力な分野だ。山東は中国で唯一、全41種類の主要工業分野を網羅する省であり、100を超える主要製品の生産量が全国トップ3に入る。2024年には235の国家級製造業チャンピオン企業を輩出し、全国首位となった。

 サービス業も急成長中で、2024年の付加価値額は5兆2300億元(約111兆4439億円)に達し、GDPの過半数を占めるまでに拡大した。観光業の爆発的な成長も見逃せない。年間の観光客数は9億人以上、観光収入は1兆元(約21兆3086億円)を突破した。

 インフラ整備も進んでおり、高速鉄道(高鉄)の運行距離は3000キロを超え全国1位に。すでに「すべての市が高速鉄道に接続」しているだけでなく、県レベルでの全域接続に向けた整備が進められている。

 山東経済は大規模でバランスが取れているが、従来型産業の比率が高すぎることが課題だった。そのため、2018年に全国で初めて「新旧産業転換プロジェクト」を開始し、新技術・新産業への移行を進めている。

 まず時代遅れの産業を淘汰し、1兆元規模の非効率な生産設備を撤廃。デジタル化とハイテク分野の成長を促進し、従来型産業にもイノベーションを注入している。

 2024年の規模以上工業(一定以上の規模を持つ企業群)の付加価値額は8.3%増加し、デジタル経済がGDPの約半分を占めるまでに成長した。

 また、再生可能エネルギーの導入が加速し、新エネルギーと再生可能エネルギーの発電容量は1億1500万キロワットに達し、石炭火力の発電量を初めて上回るという歴史的転換を遂げた。

 さらに、世界最強クラスの固体燃料ロケット「引力1号(Gravity-1)」の打ち上げや、世界最大の直径を誇るスマート・トンネル掘削機「山河号」の実用化など、技術革新が続々と進んでいる。

 山東はその産業構造の類似性から「全国の経済モデルケース」としても注目されており、新旧産業転換の先駆者として国全体の改革にも貢献している。

 新たなチャンスと挑戦を前に、山東は今も発展の勢いを加速させている。

 2025年には「全国低空経済モデル地区」の創設を目指し、無人運転の試験運用やAI産業の強化 に注力する計画だ。

 また、海外市場の開拓にも力を入れ、「万社が海外へ、山東貿易のグローバル化」プロジェクトを推進し、越境ECの拡大にも取り組んでいる。

 ビジネス環境の改善も進行中で、政府報告によると、山東省のビジネス環境の総合評価は全国トップクラスにある。こうした環境整備が経済成長をさらに後押しするだろう。

 山東は北方地域の経済発展の要衝であり、中国全体にとっても重要な工業拠点だ。

 10兆元の壁は目前に迫っており、山東省はすでに次のステージへ向けて加速している。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News