マスク氏、欧州の極右を後押し 進歩派は警戒
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【1月4日 AFP】実業家のイーロン・マスク氏(53)は、英国に解散総選挙の実施を呼び掛け、ドイツの極右を支援し、欧州連合(EU)欧州委員会を批判している。だが、これはほんの手始めにすぎず、欧州各国の極右を後押しする発言を繰り返している。欧州の進歩派は、マスク氏をどのようにして抑え込むか、あるいは抑え込むべきかどうかを模索している。
世界一の大富豪で、最も利用者数の多いSNSの一つでもあるX(旧ツイッター)を所有するマスク氏による介入は、ドナルド・トランプ次期米大統領の側近を務める立場により、同氏が前例のない影響力を手に入れた表れだ。
電気自動車(EV)大手テスラ、宇宙開発企業スペースX両社の最高経営責任者(CEO)でもあるマスク氏が目を向けているのは欧州だ。欧州政府の多くは、大衆迎合主義と極右の台頭への対処に取り組んでいる。
マスク氏は3日の投稿で、「(英首相のキア・)スターマーは解任されるべきであり、英史上最悪の大規模犯罪への共謀罪で起訴されなければならない」と主張。スターマー氏がイングランドとウェールズの検事総長を務めていた時期と、児童への数十人による性加害スキャンダルが重なっている点を繰り返し強調した。
マスク氏は、英国の極右活動家トミー・ロビンソン受刑者の釈放を求める一方、英国の新興右派政党「リフォームUK」を支援し、最近、同党のナイジェル・ファラージ党首とも会談した。
3日には、英BBCに対する政府資金投入の打ち切りを求めるリズ・トラス元英首相のメッセージを共有した。
英調査会社サバンタによると、マスク氏は米国と同様に英国でも、若い男性の間で人気が高まっている。
サバンタの政治調査部門のディレクター、クリス・ホプキンス氏は、そうした層にとって「成功と富の認識の境界線は、政治によってますますあいまいになっている」と指摘した。
英政府はこれまで、時折苦言を呈するか、トランプ政権と協力することを「楽しみにしている」と強調する以外は、マスク氏の発言へのコメントを控えてきた。
だが、ウェス・ストリーティング保健・社会福祉相が3日、マスク氏の批判に反応したことで、英政府の綱渡りのような慎重な駆け引きが浮き彫りになった。
ストリーティング氏はITVニュースに対し、マスク氏のコメントは「誤った判断であり、間違いなく誤った情報に基づいている」と反論する一方で、すかさず、「われわれはマスク氏に協力する用意はある。マスク氏はXで、英国や他の国々がこの深刻な問題に対処する支えとなるような大きな枠割を担っていると思う」とフォローした。
政治コメンテーターのパトリック・マグワイア氏は3日付の英紙タイムズで、「2025年が幕を開け、マスク氏はもはや英国政治に対する偏見に満ちたコメンテーターではなく、内部の有力者だ」と指摘した。
衛星放送スカイニューズ・テレビの政治記者ベン・ブロック氏はXで、「英政府はイーロン・マスク氏と彼の介入への対処法を考える必要がある。これまでの対応をいつまでも続けるわけにはいかない」と指摘した。