【12月29日 AFP】男子テニスのニック・キリオス(オーストラリア)は28日、世界ランキング1位のヤニック・シナー(イタリア)がドーピング違反したにもかかわらず寛大な処遇を受けているとし、テニス界の整合性は「ひどい」ものだと語った。

シナーは、3月に行われた検査で禁止薬物のクロステボール代謝物に2度の陽性反応を示した。テニスの不正監視団体ITIAは、切り傷の治療薬が入ったスプレーを使用した理学療法士から処置を受けた際に薬物が体内に混入したとのシナーの主張を受け入れ、出場停止処分を科さなかった。

一方で世界反ドーピング機関(WADA)はシナーの無罪放免に不服を唱え、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に異議を申し立てている。

過去にもITIAの決定について厳しく批判していたキリオスは、負傷による休養からの約1年半ぶりの復帰に向けた記者会見でも遠慮はなかった。

「今のテニス界の整合性は本当にひどい状態」だというキリオスは、「許されることではない」とし、自身が「感情的になることもあるし、ラケットを投げることもあるが、それは不正行為やパフォーマンス向上薬を使うことに比べれば何でもない」と続けた。

シナーが不正行為をしていると非難しているのかと尋ねられたキリオスは、事実を見てほしいと記者団に訴え、「彼は別々の時期に2回のドーピング検査に失敗した」「連続してではなくて、異なる時期に行われた。つまり、それが彼の体内に侵入した方法だと考えるなら、それが起こった方法だと考えるなら、それはそれでいい。ただ、もし彼が何も悪いことをしていないのなら、なぜ賞金とポイントを剥奪されたのか? 明らかに何か問題があったからだ」と述べた。

女子の前世界ランク1位イガ・シフィオンテク(ポーランド)もドーピング違反で出場停止処分となったことを受け、キリオスはテニスのイメージが損なわれていると述べた。ITIAは意図的な違反ではなかったと認定しておりシフィオンテクの出場停止処分は1か月にとどまった。

「2人の世界ナンバーワンがドーピングで処分を受けるのは、テニスに対する嫌悪感を抱かせる。最低だ」

キリオスは復帰戦となるブリスベン国際の初戦で、フランスの新星ジョバンニ・エンペチ・ペリカールと対戦する。(c)AFP