【解説】性的暴行、拷問、殺害…アサド政権による残虐な人権侵害
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【12月13日 AFP】シリアで8日に崩壊したバッシャール・アサド政権は、2011年に内戦が始まって以降、拷問、性的暴行、即決処刑といった人権侵害を行っているとして非難されてきた。
アサド大統領失脚を受け、国連(UN)調査団は、最高位の責任が問われる必要があるとしている。
アサド政権下での人権侵害について分かっている事例を見ていく。
■「シーザー」の写真
2013年、「シーザー」というコードネームで知られるシリア軍の元フォトグラファーが、11~13年に撮影した衝撃的な写真約5万5000枚と共に国外逃亡した。専門家によって本物と確認された写真には、シリアの刑務所で拷問されたり、飢え死にしたりした人々の遺体が写っていた。
目をえぐり取られた遺体、やせこけた遺体、背中や腹部に傷のある遺体の他、埋葬時に使われるプラスチックの袋と共に小屋の中に押し込められた数百の遺体を捉えた写真もあった。
アサド政権下のシリア政府は、これらの写真について「政治的」だと述べるにとどまっていた。
しかし、シーザーは米議会で証言し、写真はシリアに経済制裁を科すために制定された2020年の米国法に影響を与えた。
国連調査団は、アサド政権下で人権侵害に関与した政府高官と工作員4000人の氏名が記載されたリストを入手済みだとしている。
■「拷問群島」
2012年、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は、シリアの刑務所内の状況を「拷問群島」と呼び、「電気(ショック)の使用、自動車用バッテリー液によるやけど、性的な暴行や侮辱、爪のはぎ取り、模擬処刑」などが行われていると指摘した。
22年にはNGO「シリア人権監視団」が、11年以降の刑務所内での死者数は10万人を超えていると発表している。
こうした状況を受け、国際司法裁判所(ICJ)は23年、シリア政府に対し「非人道的または品位を傷つける扱いや刑罰」をやめるよう命じた。
■性的暴行
ドイツで2020年、7人のシリア難民が、2011~13年にシリアで強姦(ごうかん)、女性器への電気ショック、脱衣の強制、中絶の強制などの拷問や性的暴力の被害に遭ったと訴え出た。
国連は18年、兵士やアサド派民兵による民間人への性的暴力があったと発表した。調査の結果、反政府勢力側でも同様の犯罪が行われていたが、発生件数は政府側よりも少なかった。
シリア人権ネットワークは24年11月25日の発表で、11年3月以降、内戦に関与する勢力による女性に対する性的暴力事件が、18歳未満の少女を含めて少なくとも1万1553件あったと報告した。うち約8024件はアサド政権派による犯行、その他は主にイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の犯行とみなされている。