【12⽉25⽇ Peopleʼs Daily】人工知能(AI)は科学研究にとっても重要な「武器」になった。中国でも多くの分野にわたって、AI駆動型の科学研究が進められている。

 電池に使う電解液は、電池の性能を大きく左右する。電解液を構成する物質の分子の組み合わせ数は膨大であり、一つ一つ試していくのでは効率が非常に悪い。清華大学(Tsinghua University)化学工学院の張強(Zhang Qiang)教授は陳翔(Chen Xiang)副研究員と協力して、「AIを使うリチウムイオン電池電解液の設計」という新手法を編み出した。

 チームは、ハイスループットという高効率のデータ処理法とソフトウエアを開発し、25万種類以上の電解液分子構造を網羅するデータベースを構築。さらに、開発したAI大モデルとソフトウエアを使って仮想空間に億単位の電解液の分子の組み合わせを出現させ、その性質の迅速な予測などを示せるようにした。陳副研究員は、「研究者はこれらを使って、ニーズに応じて最も適切な電解液を開発することができます」と説明した。

 中国農業科学院(Chinese Academy of Agricultural SciencesCAAS)付属国家南繁研究院の李慧慧(Li Huihui)副院長は「従来型の育種方法は経験に依存し、時間がかかり、表現型(実際に個体に出現する特徴)が環境の影響を受けやすいので、効率が悪いのです」と説明した。世界に約1750か所ある植物の遺伝資源バンクには700万種以上の遺伝資源が保存されているが、多くの貴重な遺伝資源がまだ十分に利用されていない。李副院長は、「AIが支援するゲノム選抜ならば、数百万の遺伝子を数週間以内に分析することができ、育種プロセスの効率と精度を大幅に向上させられます。応用の潜在力は巨大です」と述べた。

 中国農業科学院は近年、農業科学技術とAI技術の融合の推進を加速し、生物育種やスマート農業機器などの分野で学際チームを結成した。李副院長はチームを率いてディープラーニングアルゴリズムに基づくゲノム選択モデル、全プロセススマート育種プラットフォームなどの開発に力を入れ、水稲、トウモロコシ、小麦などの育種効率を高めてきた。

 AIと科学研究の融合を推進するには、研究を支援する仕組みづくりが大切だ。上海交通大学(Shanghai Jiao Tong University)AI研究院の楊小康(Yang Xiaokang)常務副院長によると、より多くの教員がAIを活用して研究することを支援するために、同大学とIT大手の百度(Baidu)傘下の百度スマートクラウドは共同でAI駆動型の研究プラットフォームを構築した。百度スマートクラウドが提供する演算力や大モデル開発ツールなどの能力を利用して、研究者は化学合成、流体計算、都市科学、法律などの分野で研究を展開し、一連の大きな成果を収めたという。

 例えば抗HIVウイルス小分子設計ではかつて、有望な化合物の選定に2~3年かかっていたが、現在ではAI駆動型の研究プラットフォームを利用して、わずか2分で25万種以上の新分子を見いだし、さらに30分以内に172種の有望な分子を選び出せるようになったという。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News