世界遺産「北京中軸線」で古木群の保護進む
このニュースをシェア
【11月18日 Xinhua News】中国北京市の中心部にある景山公園を訪れたハンガリーの観光客、ペーテルさんは、エンジュの古木に目を奪われた。枝葉を大きく広げ、高くそそり立つ姿が、灰色の瓦と赤い壁の古建築と互いに引き立て合っている。専門家の推算によると、樹齢は千年超。「この木の歴史は唐代まで遡ることができると書いてある。信じられない」。ペーテルさんは感銘を受けた様子で、携帯電話を取り出しシャッターを押していた。
景山公園は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に今年登録された「北京中軸線」上にある。北京の中心部を南北に貫くこの都市軸は13世紀に建設が始まり、16世紀に完成、その後も整備が続けられてきた。旧市街の都市計画の骨格となった建築や遺跡が組み合わさった文化遺産であり、15のランドマークからなる。
北京中軸線上にある文化遺産ではここ数年、世界遺産登録へ向けた保護活動の下、古木に対する日常的な巡回点検や維持管理、専門家による定期診断、生存の危ぶまれる古木の応急措置や樹勢回復を進めてきた。関係者らの全力の作業により、景山公園、故宮、太廟、社稷壇(しゃしょくだん)、天壇、先農壇の六大古木群が活力を取り戻し、数千本に上る古木が観光客に北京の悠久の歴史を伝えている。
中山公園にある社稷壇の南壇門外には、この場所が興国寺だった遼の時代から残るヒノキの古木が7本あり、それぞれの姿で力強く生い茂っている。隣接する北京故宮博物院の幅のある堀のほとりには200本近くのヒノキの古木が並び、観光客らがゆったりと散策を楽しんでいる。
北京市中山公園管理処園林科技課の技術者、唐碩(とう・せき)さんらはここ数年、古木の修復技術や病虫害の生物的防除、古木の成長・環境モニタリング方法などの研究を強化し、古木保護のためにより標準化されたガイドラインを提供してきた。関連研究機関と連携し、先進的な機器や分析ソフトを利用、古木の「デジタル画像」を作成することで、古木の研究や保護修復をデータ面から支えているという。
天壇公園の回音壁の横には樹齢600年以上とされるヒノキがそびえ、「北京で一番美しい10本の木の一つ『天壇九竜檜』です」とガイドが観光客らに説明していた。幹に縦長のくぼみがいくつもあり、9匹の竜が絡みついているように見えるのが名前の由来だという。幹にかかった札のQRコードをスマホでスキャンすると、年代や樹高、平均樹冠幅、歴史文化などの情報が表示される。
公園内の資料室には、古木の生長と変化を記録したファイルが古木1本ごとにあり、身分証番号のようにそれぞれ番号がついている。天壇公園は古木の生長と観光のバランスを取りながら、一部の古木の周りの舗装を撤去、特注した格子状の保護板を敷設、周辺の土壌が踏まれて硬くならないようフェンスも増設した。古木が密集したエリアではモニタリング装置を設置し、数十本が生育する環境をリアルタイムで監視している。
北京市は古木の文化コンテンツ掘り起こしも進めている。SNSアプリのミニプログラム「古樹観察」を開発、古木の知識を得ると同時に交流もできるプラットフォームとして注目を集め、古木保護への関心を高めた。さらに中軸線周辺エリアの古木保護にも力を入れ、通りや居住区域を巻き込んだ保護活動を推進、古木の健康的な生長を促している。(c)Xinhua News/AFPBB News