【11⽉30⽇ Peopleʼs Daily】「ほら、ほら、捕れた」――。広東省(Guangdong)から来た蒲さんは歓声を上げながらたも網を使って、釣った魚をすくい上げた。

 福建省(Fujian)漳州市(Zhangzhou)東山県(Dongshan)内の前楼鎮(Qianlou)下西坑村の沖合で、地元民の許梅貞(Xu Meizhen)さんは蒲さんら観光客を自分の漁船に乗せて海釣りをさせている。蒲さんは海釣りが好きで、許さんが経営する民宿に泊まることにした。許さんは宿泊客を連れて、海に出ての海釣りやカキ取り、さらには漁網づくりなど漁業を体験してもらっている。

 下西坑村は背後に山、前に海があり、人を和ませる風景だ。許さんは2019年に自宅敷地内の使っていない建物を民宿にした。ここ2年間は、商売がますます好調だ。許さんは「夏休みはほぼ満室で、今の客数もまずまずです」「この辺りの海は広くて水が澄んでいます。この素晴らしい環境は、誰だって好きになりますよ」と言った。

 実は、付近の海域には養殖汚染問題があった。前楼鎮の沈浩超(Shen Haochao)副鎮長は、「海水が濁っていて、岸辺ではとても生臭かったのです」と話した。

 海がきれいで澄んでいてこそ観光客を呼ぶことができる。下西坑村は2020年から沿岸養殖区を800メートル沖合に移し、養殖密度を下げた。また、養殖で使っていた発泡スチロール製のブイをプラスチック製に代えさせて漂流ごみの発生を減らした。許さんは積極的に対応し、2022年にカキとオゴノリの養殖施設の改造を終えた。

 沈副鎮長は「オゴノリを養殖すれば二酸化炭素が固定されます。下西坑村のオゴノリ年産量は10万トン以上で、オゴノリだけでなく炭素も商品なのです」と説明した。沈副鎮長によると、下西坑村は専門家を招いて管轄区海域内の年間炭素保存能力を評価してもらい、炭素取引で94万6000元(約2020万円)の価値があると知った。そして2023年には炭素取引で42万元(約897万円)を得た。沈副鎮長は、「村は炭素取引で得た金額の一部を漂流ごみの回収作業に充てて、海域の生態環境を維持しています」と説明した。

 村と鎮の幹部と住民が共に努力したことで、海域の環境ははっきりと改善された。毎年6月から10月までは民宿の仕事で忙しく、10月から5月は養殖の仕事に精を出す。許さんは「以前は養殖で稼げたのは半年限定、今は1年中仕事をして収入があります」と言って笑った。

 中国共産党下西坑村党支部の許桂喜(Xu Guixi)書記によると、村は過去2年間、年平均50万人近くの観光客を受け入れ、観光収入は2000万元(約4億2700万円)以上に達した。

 沈副鎮長によると、さらに広域で海洋環境を改善するため、前楼鎮では下西坑村を中心に周囲の村が連携して「農漁業と観光業で共に裕福に」連合村党委員会を設立し、村境を超えた海域生態環境の改善を展開している。委員会は住民の収入増を実現するための漁業と観光を結合させた事業を模索している。(c)Peopleʼs Daily/AFPBB News