酸味スープ火鍋が中国の食卓で人気を集める
このニュースをシェア
【11月6日 CNS】秋が深まり、中国北部の多くの地域では早くも初雪が降り、冷たい空気が訪れている。そんな中、火鍋のシーズンが到来し、さまざまな種類の火鍋が登場している。最近では「中華版トムヤムクン」とも呼ばれる「酸湯」の火鍋が、これまでの紅油(ラー油)や清湯(澄んだスープ)、トマトスープなどの火鍋の中から注目を集め、一気に人気のトップに上り詰めた。
2023年は中国で酸湯火鍋がブームとなった年だ。全国的に酸湯火鍋の店舗数が急増し、関連の統計データでは、2023年に酸湯火鍋関連の企業登録数が過去10年で最も多く、前年比で71.16パーセントも増加している。酸湯火鍋は、雲南省(Yunnan)や貴州省(Guizhou)などの雲貴高原(Yungui Plateau)から広まり、中国各地で簡単に楽しめる美味しい食べ物として親しまれるようになった。
北京市に住むジェファー(Jeffer)さんは、雲南省・貴州省への旅行をきっかけに酸湯火鍋の「大ファン」になり、その酸味がやみつきになったそうだ。「2022年の頃は、王府井(北京の有名な商業エリア)に1軒しか酸湯火鍋の店がなかったんです。それが昨年末から北京に貴州酸湯火鍋の店舗が増え始めて、今年の国慶節の時期には家の近くに2軒もオープンしていて、すぐに行けるようになったんですよ」と彼は語る。
店舗数が増えることで、酸味好きな人びとのニーズに応えており、まさに「お互いに求め合っている」関係だと言える。「2024年中国火鍋経営発展報告」によると、2023年の火鍋スープベースの人気ランキングでは、酸湯スープが牛脂スープに次いで2位に入っている。
牛脂スープのような重たい辛さに比べて、酸湯火鍋の特徴はその「酸味」だ。特に人気を集めている貴州の「紅酸湯」は、地元産の野生トマト(毛辣果)と赤唐辛子を主な材料とし、塩や酒粕を加えて土製の壺で密封発酵させて作られ、独特で風味豊かな酸辣味が楽しめる。
実は、貴州料理の調理法は、日本人が好む発酵文化と共通点がある。日本には納豆や味噌、漬物、塩麹などの発酵食品があるが、貴州には豆鼓(発酵した黒大豆)や酸味スープ、発酵唐辛子、臭豆腐などがある。
この酸湯火鍋は日本でも人気が出始めている。東京都豊島区南大塚にある「東京黔大叔烙鍋酒場」や「菊下楼」といった店では、貴州酸湯火鍋が注目を集め、中国料理の新しいスポットとして知られるようになっている。
さらに、この酸味と辛味の独特な美味しさは、トムヤムクンが好きなタイの人びとにも関心を持たれている。今年5月には、タイの第9テレビ局「World Pulse」で「酸湯魚料理、貴州の伝統料理」という特集番組が放送され、貴州の伝統的な料理である酸湯魚の起源や作り方、食べ方が詳しく紹介された。この番組の放送後、鮮やかな色合いと豊かな味わいを持つ貴州酸湯火鍋は、タイの視聴者に広く受け入れられた。
実際、「貴州の酸味」が注目される理由は、その特有の味だけでなく、人びとが持つ「詩と遠方」への憧れも関係している。2024年には、貴州が中国で最も人気のある観光地の一つとなり、夏休みの間には観光地の予約が前年比で153パーセントも増えた。「村BA(村のバスケットボール大会)」は、国慶節の期間中にさらに多くの観光客を引き寄せ、大会が行われた貴州省榕江県では49万8900人が訪れ、前年比24.82パーセントの増加となった。
「詩和遠方(中国でよく使われる表現で、詩的な情緒や理想的な美しい景色、そして非日常的な憧れを指す)」は長くは続かないかもしれないが、貴州の風情を感じることは簡単にできる。遠く離れた地にいる中国の人びとは、酸味と辛味が絶妙な酸湯火鍋を通じて、美しい自然にいるような気分を味わいたいと思っている。
SNSでは、日本に住む中国人留学生が自分で酸湯火鍋を作り、「貴州を懐かしく思う気持ち」を癒す様子がよく見られる。彼らはVlogで酸湯の作り方や特製の唐辛子ダレの作り方をシェアし、多くの視聴者がそれを試してみたくなるような投稿をしている。
しかし、急激な人気が長続きするわけではない。中国では、多くの「食通」が酸湯火鍋の店舗の急拡大による問題に気付き、熱狂的な支持から冷静な評価へと移行している。
北京の商業施設にある貴州酸湯牛肉火鍋の常連客だった「湯円(Tang Yuan)」という人は、最近口コミサイトに不満を書き込んでいた。「以前は酸湯と牛肉が本当に美味しくて、毎週のように通っていたんですが、最近はスープの味が時にしょっぱくなったり、料理の量もバラバラで、特製豆腐の食感も悪くなり、鮮度の良い牛肉が硬くて食べづらい部位に変わったりしています」と話している。
「食材の品質が下がると、せっかくの酸味を楽しみたいという気持ちも萎えてしまいます。だから、店舗数を増やすだけでなく、安定した品質を保ってほしい」と語っている。(c)CNS/JCM/AFPBB News