【10月30日 AFP】国連の人権専門家は29日、ロシアがウクライナ侵攻開始以降、国内外で拷問の使用を拡大していると警告した。特に侵攻に対する批判を抑え込むために用いられているとしている。

 国連人権理事会(UN Human Rights Council)が任命したマリアナ・カツァロバ(Mariana Katzarova)特別報告者(ロシアの人権状況担当)は会見で「ロシアにおいて拷問は市民空間を抑圧し、反戦派や反体制派、ロシア当局とその政策に異を唱えるすべての人々を沈黙させる道具となっている」と述べた。

 また、ロシアでは過去30年にわたって拷問の使用が記録されてきたが、ウクライナに対する「全面的な侵攻以降、それは計画的戦略となっている」と述べた。

 国連総会に提出された報告書によると、拷問を受けた人の中には良心的兵役拒否者やウクライナとの戦闘を拒否した正規軍の兵士が含まれている。

 またウクライナ紛争の前線付近に少なくとも15か所の「非公式な拘禁施設」が存在し、「数百人が拘束され、懲罰として拷問を受けている」ともした。

 カツァロバ氏はロシア当局との会見や同国訪問を要請したが「無回答のまま」だという。

 調査結果は人権団体の報告書や分析、ロシア人弁護士や拘束から解放され帰国したウクライナ人の証言などに基づいている。

 報告書は「ロシア当局は(これまで)ほとんど責任を問われたことがない。この免責が社会における拷問の『正常化』、暴力文化の『正当化』に寄与している」と批判。

 法執行機関や刑務所の看守、命令を受けた受刑者などによって行われる「残忍な拷問は懲罰だけでなく、故意に屈辱を与え、心理的および身体的に永続的な傷を負わせ、果ては死に至らしめることを目的としている」と述べた。

 また、今年獄死した反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ(Alexei Navalny)氏に科された長期の独房監禁についても批判している。(c)AFP