英連邦諸国、チャールズ国王に奴隷制の「償い」要求
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【10月25日 AFP】英国のチャールズ国王(King Charles)は25日、サモアで開催中の英連邦(コモンウェルス、Commonwealth)首脳会議(サミット)で、植民地時代の過去の償いを求められた。
英国の旧植民地を中心とする56か国の首脳が集うサミットに、チャールズ国王が出席するのは戴冠後初。
だが、25日の会議は気候変動など喫緊の課題ではなく、英植民地時代の奴隷制や負の遺産といった歴史をめぐる激論に発展した。
アフリカ、カリブ海、太平洋の多くの旧植民地諸国は、宗主国だった英国や欧州列強が奴隷制に対する金銭的補償か、少なくとも政治的な償いを行うことを望んでいる。英連邦サミットでも補償的正義をめぐる議論を要求しているが、財政難にある英政府はそれを阻止しようとしてきた。
バハマのフィリップ・デービス(Philip Davis)首相はAFPに対し、「歴史上の過ちにどのように対処するかについて、真の対話を行う時が来た」「補償的正義の議論は容易ではないが、極めて重要だ」と主張。「奴隷制の恐怖は、われわれのコミュニティーに世代を超えた深い傷を残した。正義や補償的正義のための闘いは、まったく終わっていない」と述べた。
数世紀にわたり奴隷貿易から利益を得てきた英王室は、謝罪を求められている。
だが、チャールズ国王はその点については踏み込まず、各国首脳に対し「分裂の言葉を拒む」よう呼び掛け、「英連邦各地の人々の声を聞く中で、過去の最も痛ましい側面が今に与え続けている影響は理解している」と発言。
「過去を変えることは誰にもできない。しかし、われわれはその教訓を学び、今も続く不平等を解消する創造的な方法を見いだすために全力を尽くすことができる」と続けた。
■過去との向き合い
英国のキア・スターマー(Keir Starmer)首相は補償の支払いを公然と拒否しており、英高官らはサミットでの謝罪はないとしている。
だが、サミットでは植民地時代に関する議論を呼び掛ける共同声明案をめぐり、激しい交渉が展開されている。
デービス首相は「補償の要求は単に金銭的なものではなく、何世紀にもわたる搾取の持続的な影響を認め、奴隷制の遺産に対する誠実かつ正直に向き合うことを求めている」と強調した。
次期英連邦事務総長候補の一人、レソトのジョシュア・セティパ(Joshua Setipa)氏によると、補償には気候資金のように従来の形態とは異なる支払い方法が含まれる可能性がある。(c)AFP